第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

138/222
前へ
/2550ページ
次へ
霊力(ちから)は高速で構築されていく。 アタシの頭の中に描いたイメージがそのまま形になっていく。 いつもは霊刀、スラリと鈍く光って最高にカッコイイ。 だけど、これから出すのはゴツくて太目、スリムじゃないけど愛嬌はあるかな。 『女ぁぁぁ……! 髪寄越せよよぉぉぉ……! 霊力(ちから)を取り込ませろぉぉぉ! 』 まだ言ってら。 女の髪は霊力(ちから)になるから必死だな、雑魚が見苦しいっつの。 ちょっと待ってろ、もう少しで構築終わるし。 アタシの髪を切りたくてたまらない悪霊は、数ダースのナイフを四方八方から投げてくる。 アタシはまるで野生の猿のように、飛んで跳ねて身を捩って刃物をかわす。 もう少し……もう少しで……あと少しで…… ハイ! キターーーーーーーーー! 構築完了。 アタシは肩幅大に開いた脚をグニグニの床の上、馴染ませるように力を入れた。 長い筒状、肩に担いで狙いを定める。 『お、女ぁ……オマエ……ソレなんだ……?』 悪霊の声が狼狽えている。 つかウケル、分かり易いよ。 明らかに不審がってる。 「コレか? アタシの霊力(ちから)で構築した、パンツァーファウスト。携帯式対戦車擲弾(けいたいしきたいせんしゃてきだん)だ。一発撃って使い捨ての武器だけど、霊力(ちから)を使えば無限に出せる。対戦車戦だけあって破壊力は半端ない。分厚い内蔵壁もコレで木端微塵だ。壁と天井と床と……6発も撃てば、どれかオマエ本体にヒットするだろ」 別にアタシは軍オタじゃあない。 これは昔、ジャッキーから借りたゲームに出てきた武器だ。 ジャッキーはゲームの中でパンツァーファウスト使いだったから、アタシも真似して使ってた。 本物なんか見たコトないし、画面の中でしか知らないけどさ。 でもね、構築なんてみんな結構テキトウだから。 イメージだから、フィーリングだから、悪霊倒せりゃなんでもいいから。 大好きなジャッキーと同じの使いたいだけだからっ! 「さぁて、まずはどこに撃ちこむか」 舌なめずりをしながら、天井に、壁に、床にと狙いを変える。 『待て……ちょっと待て……』 「や、待たない」 『い、いいのか!? こんな狭い中で撃ったらオマエだって無傷じゃいられないだろうがっ!』 「ダイジョウブ、だって攻撃と防御同時にするもん」 メンドクサ。 もう撃っちゃっていいかな。 とりあえず声がする方向……どうも天井が怪しいんだよねぇ。 ガショッ! 床にほぼ垂直にパンツァーファウストを構える。 『待ってーーーーーー! ちょっと! そうだっ! ココにいた男! 俺達を引き寄せたあの男の事知りたくないか?』
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加