第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ ~~ドアのこちら側・マジョリカ2~~ ※微グロ、ブツブツ注意です。ごめんなさい。 【まじょりか ダイジョウブ?】 狭い結界の卵の中に、ヤヨイのコトバが降ってくる。 ウチを心配してくれる。 ごめんね、大丈夫……ああ、ウソ。 本当は大丈夫じゃない、怖いの、気持ち悪いの。 覗き込むヤヨイに返事すら出来ない。 ヤヨイの小さな手を握り、卵の中で蹲る。 視なければいいのに視てしまう…… 卵の結界。 紫がかった透明の壁はウチとヤヨイを守ってくれる。 だけどさっきから、卵はガタガタと揺れているの。 ずっとこうだ。 霊体(からだ)にびっしりブツブツの悪霊達が、中を覗き、外側を叩き、卵ごと倒そうと囲んでるんだ。 無数の手のひらがベチョっと壁にくっついて、嫌でも目に入ってくる。 アイツらのブツブツ……手のひらのは霊体(からだ)のに比べて小さいの。 黒くて細かいブツブツがびっしりと、壁を叩くたびに破裂して潰れるんだ。 潰れた瞬間、黒い汁が飛び出して壁に汚い跡をつける。 潰れた箇所はグチュグチュで、だけどすぐ、修復するかようにブワッと一気にブツブツが増えるんだ。 視てると鳥肌が立つ……気持ち悪い。 ヤヨイの結界はすごく強くて、どんなに攻撃されても壊れたりしないけど、生理的嫌悪感がウチを蝕んでいくようで気が狂いそうだった。 もし……潰れた時に出る黒い汁がウチにかかったら、ウチの身体もあんなふうになるのかな……? ヤダ……ヤダ……ヤダヤダヤダヤダ……!! もう還りたい……黄泉の国に還りたいよ。 悪霊(あんなの)がいない国、善人しかいない国。 争い事もなく、生活の心配も、健康の心配も、老いの心配もない。 毎日を全力で楽しんで、誰かを愛し誰かに愛され、満たされた幸せな気持ちを百色華(ひゃくしょくか)に分けてあげるの。 ジャッキと二人で還りたい。 幸せな黄泉の国で1000年経っても愛し合いたいよ。 ああ……なんであの時、ジャッキを現世に行かせてしまったんだろう。 不正をしてでも引き止めるべきだったんだ。 そうすれば、こんな目に遭う事もなかったし、ジャッキが大倉弥生を好きになる事もなかった。 ウチとジャッキは、好きなコトをしながら、愛し合いながら、いつまでも幸せに暮らせたのに……………… ………………気持ちが落ちていく。 黄泉の国にいれば毎日が幸せで、こんな気分になる事はないのに。 辛くてたまらない。 黄泉の国にあんな醜い悪霊(モノ)はいないのに。 気持ち悪くてたまらない。 黄泉の国には、バラカスも白雪ちゃんも光道(こうどう)の仲間達もいる。 ここには誰もいない。 ………………現世には誰もいない。
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