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◆
~~ドアを開けたら合流です・僕視点~~
※微グロ、ブツブツ注意です。ごめんなさい。これで最後です。
「……ありがと。もう大丈夫だよ」
温かい腕の中、背中をトントンされつつ大泣きしたら、いつの間にか僕の中にこびりついた恐怖と不安が消えていた。
名残惜しくも弥生さんから離れ、キッチンの床の上、気持ち近めに座わり直す。
「そか、少しは元気になれたか。また辛くなったらガマンしないで泣けば良い。ん? 男なのに恥ずかしい? あはっ、辛い時に男も女もないよ。ダイジョブだ、泣いても内緒にしてあげる、」
そう言ってニッと笑った弥生さんは、僕の肩をバシバシと叩き、そして。
「んじゃあ、マジョリカんトコ行こうぜ。ヤヨちゃんがいるから大丈夫だと思うけど、悪霊君達はキモ揃いだからな、女神様には刺激が強過ぎる」
言いながら霊刀を出現させると、左手にしっかりと握り臨戦態勢だ。
僕も覚えたばかりの赤い霊矢を、今からスタンバイしたい所だけど、偽ジャッキー戦で学習したんだ。
これからは戦う前に必ず切り分けをする。
霊と思われる対象に放電し、僕との両間に赤い電流が繋がるか否か確認をする。
そうすれば滅した後に、もしかしてあれは生者だったのでは……と悩む必要がなくなるもの。
何事も基本動作の徹底が大事なのだ。
今度は僕が先頭に立ちドアを開けた。
弥生さんを背中に隠し……まではいかないけど、それでもすごく嬉しかった。
危険な場所だもの、やっぱり弥生さんを守りたいよ。
開けたドアの向こう側を視た僕と弥生さんは、たっぷり5秒は黙り込んだ。
その後、ほぼ同時に声を発したのだが、性格が出るのだろう、その内容はまったくの真逆だった。
「ナニアレーーー! ブツブツ気持ち悪---っ!!」
「すげっ! 巨峰だっ! デッカイ巨峰食べ放題じゃんかっ!!」
発した直後、僕らは顔を見合わせた。
「弥生さん……アレ視て、よく食欲湧くね。果物じゃないからね? 巨峰じゃないからね? 食べられないからね?」
弥生さん、逞しいにも程がある。
かろうじて人の形に視えるけど、全身に大きさの異なる黒いピンポン玉を隙間なくつけたような、顔面もピンポン玉で覆いつくされた、あのキモイビジュアルを視て巨峰が食べたくなる逞しさはマジリスペクトだ。
「ちょっ! アタシだってさすがに本気で食べようとは思わないよ! でもさ、パッと視、デッカイ巨峰じゃない? つーかさ、エイミーちゃんの目にも、アレは巨峰に視えるんだ。生者と変わりなく視えるんじゃないんだね。ってコトは……アイツら、悪霊から妖怪化してんのかも」
「……ん? そう言えばそうだ。僕の目にも巨大キモ巨峰に視えるよ。ワーオ! いつもあれくらい分かり易いと楽チンなんだけどなー。あ、でも念の為に切り分け放電しとこかかな……」
さっそく電気を溜めるべく、右手手のひらを湾曲させて神経を集中させる。
が、しかし、隣がうるさくて気が散ってしまう。
「ちょっとちょっとー! さすがにアレは、切り分けの必要ないでしょ! あんな巨峰野郎共、悪霊だが妖怪で間違いないよ。一列に並べて端から滅していいと思うけど、」
猫がオモチャにじゃれつくように、僕の肩をチョイチョイしてくる弥生さんのせいで、ちっとも電気が溜まってくれない。
「んもー、ちょっと静かにしてくれない? 気が散って電気が上手く溜まらないよ。まぁね、僕もさすがにアレに切り分けいらないかなって思うけど、もしかしたらあの中に、巨峰コスした生者が混ざってるかもしれないじゃん」
人の好みはそれぞれだ。
巨峰が好きでたまらないレイヤーさんがいるかもしれないだろ?
僕と弥生さんが知らないだけで、世の中ナニが流行るか分からないんだからさ。
「エイミーちゃん、可能性拾いすぎ。賭けても良いわ、巨峰コスするヤツなんて絶対いないよ」
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