第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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そうかな? でもま、一応、念のためにねっ、と。 弥生さんのジャマにも負けず、電気を溜め切った僕は、スター配線状に一気に放電した。 すると、繋がる繋がる。 弥生さん曰く、巨峰野郎共全員に繋がった。 ヨシッ! 悪霊または妖怪で間違いない! 巨峰野郎共は玄関、廊下、二階に続く階段途中まで、ワラワラいっぱいいるのだけど、特に廊下の真ん中あたりに何体も団子になって固まっていた。 そこに僕の赤い電流が絡みながら集中してる。 あそこにあんなに集まってるのはどうしてだろう? てか、ヤヨちゃんとマジョリカさんはどこ? ……まさか、あの巨峰が大盛になってる、あの中にいたりとか……しちゃう? 「ねぇ、マジョリカさん達の姿が視えない。でもって巨峰大盛のアソコ……怪しくない……?」 恐る恐る指を指す先、巨峰がボコボコ積み重なっている。 ウゥゥゥァァァァなんて、何が言いたいのかサッパリ分かんない唸り声を上げている。 「あー怪しいねぇ。あの中にいそう。つーか、いるな。でも大丈夫、一緒にいるのはヤヨちゃんだ。きっと結界張ってやり過ごしてる。マジョリカが一緒だから、無茶はしないと思うし。そうだ、エイミーちゃんが覚えたばっかりの霊矢ぶっ放して、あの巨峰団子全部滅しちゃってよ」 「いやいやいや、ダメだよ。たって巨峰団子の中身はヤヨちゃんとマジョリカさんでしょ? まずは二人を出してからじゃないと矢は撃てない。怪我したら大変だ」 思い出したくないけど、赤い霊矢は偽ジャッキーの頭ごと吹き飛ばしたんだ。 あんなもの、あの二人を避難させる前に撃つなんて出来ない。 「大丈夫だよ、心配いらない。ヤヨちゃんの結界は鉄壁だ。言っただろ? 今のあの子の霊力(ちから)はえげつない。どんな霊攻撃も跳ね返す。だから遠慮はいらないよ。アタシとヤヨちゃんを信じて」 「……分かった」 弥生さんを信じる事にした。 こうして話している間にも、新たな巨峰野郎共が壁を通り抜け、家の中に入ってきている。 グズグズしてたら数が延々増えるだけだ。 再び、僕の脳内にある水渦(みうず)さんの印の動画を再生する。 手指を曲げて伸ばして捻って抜いて、長い工程を素早い動きで時間を短縮する。 難易度は高いけど、工程をこなすにつれて、手指に、身体の奥底に、霊力(ちから)がジャージされるのを感じるのだが、これは一つも間違える事なく結べている証拠なのだ。 ノンミスで工程を潰していって………………ヨシ! 結びきったっ! 両手の五指は漏れる赤い光がバチバチをスパークしている。 あとは発射をイメージし気持ちを集中させる……と、まただ、身体の奥底から沸騰した血液が登ってくる感覚に支配され、そのエネルギーの出口、両手両五指をターゲットに狙いを定める。 大丈夫、距離は無い。 団子になってる巨峰野郎共は、霊体(からだ)を小刻みに動かしているけれど、逃げ回る訳でない。 これなら僕でも外さない。 「fire away(ファイヤ アウェイ)!」 撃ち尽くせ! なんて、この間深夜アニメで見た主人公のセリフ。 ちょっと中二っぽいけど、せっかくだからと掛け声をかけながら、僕は赤の霊矢を撃ち込んだ。
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