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両手両五指、一回、十発。
霊矢を延々連射させていた。
巨峰大盛はもちろん、ワラワラノソノソ、鈍く動く、その他の巨峰野郎共にも。
てか、霊矢いつ撃ち止めになるんだろ?
弥生さんが「スゲェなっ!」って笑ってる。
本当?
コレすごいの?
いつ矢が尽きるのか限界量が分からない。
かといって身体に負担らしきものは何もない。
僕の意思で止めるまで、いくらでも撃てそうなんだよね。
まぁ、いいや。
足りないよりは良いだろう。
それにしても、やりすぎだろうか?
でもさ、完全にトドメをささないと、霊矢を受けたグチャったビジュアルで反撃されても怖いじゃない。
目の前の巨峰野郎共は、中身がヘドロの水風船が次々潰れるように、粘度の高い黒い汁を撒き散らしながら、視る視るうちに萎んでいって、しまいには濃霧となって飛散した。
「うぅぅ……今回もちょっとグロかった……気持ち悪ぅ」
ギェェェェッ!
耳に残る断末魔。
負の輪唱を聞きながらの滅し作業は、悪霊初心者の僕にとって気分が下がるばかりだった。
だけど、これでマジョリカさんとヤヨちゃんを助ける事が出来たのだ。
”期待の新人”なんて言われながら、”テヘ、実は放電しか出来ません!”という恥ずかしいスキルだったけど、ちょっとは進歩したって言ってもいいよね?
ああん、早く先代に報告したい。
先代は誰かを褒めさせたら右に出る者はいないくらい、甘々でベタ褒めしてくれる。
僕は褒められて伸びるタイプなんだ。
それにしても……今の僕は大変なコトになっている。
跳弾ならぬ跳汁を浴び、全身ドロドロのネチョネチョで、悪霊亡き後、卵型の結界から出てきた二人に「大丈夫?」と声を掛けた途端、僕を視たマジョリカさんの悲鳴が響き渡ったのだ(このあと弥生さんに浄化してもらったよ!)。
弥生さんといえば、ちゃっかり自分だけ防護陣を展開させて、跳汁を浴びる事なく免れていた。
ちなみに防御陣はジャッキーさんが展開させるモノと同じタイプ。
ジャッキーさんが好きすぎて、同じスキルを習得したいと必死に頑張ったらしい……こういうトコロ、本当に恋する乙女なのだ。
巨峰野郎共がいなくなり、ヤヨちゃんがテテテと僕に近付いた。
そして、
【えいみ ありがと えいみ すき】
と、お花のような笑顔と”すき”の文字、最高のご褒美をいただいた。
やん、可愛い!
ヤヨちゃんの為なら、僕、頑張っちゃう!
僕がヤヨちゃんとキャッキャウフフしてる中、マジョリカさんは俯いたままだった。
無理もない、こんなんでも一応霊媒師の僕でさえ引くのだから、悪霊に囲まれて気分が悪くなってしまったのだろう。
お水でも汲んできて「飲んでください」と声を掛けてみようか。
死者の方だから基本飲食は出来ないけど、生者が「お飲みなさい」なり「お食べなさい」と声を掛ければ味わう事が出来る。
「マジョリカ……」
防御陣を解除した弥生さんが、眉を寄せていた。
美しすぎるマジョリカさんをジッと視て、驚愕した表情を隠せないでいる。
しゃがみ込んだマジョリカさんは、返事もせずに俯いたままだ。
「どうしたの、」
弥生さんに声を掛けたが、答えてくれたのはヤヨちゃんの降らす文字だった。
【まじょりか にごった ココロがおれた】
え……?
心が、折れた……?
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