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「マジョリカ……少し濁ってる……黒いノイズが入ってる……ごめん、怖かったんだな……来るの遅くなって悪かったよ、」
心配そうな顔をした弥生さんがマジョリカさんに近づいた。
ノイズが入ってる……?
靄とは……違うんだよな?
もしも心が負の感情に支配され、黒い靄が全身を覆ったら、その死者は悪霊化してしまう。
弥生さんの様子から察するに、そこまではいってないみたいだけど……心配だ。
ブツブツの悪霊に囲まれ、至近距離で視てしまったのであれば、恐怖と嫌悪感で心が折れるのも無理はない。
弥生さんはマジョリカさんの近くにしゃがみ込み、俯く霊体に手を伸ばす……が、触れる事は叶わなかった。
「怖い思いさせてごめんな、もう大丈夫だから安心して。なぁマジョリカ、動けそうか? ジャッキーが今どこにいるか分かったんだ。この家の中にいる。動けるならみんなで助けに行こう。それで……全部カタがついたら、アタシもエイミーちゃんもヤヨちゃんも帰るから、ジャッキーとちゃんと話してよ、」
弥生さんだって話がしたいだろうに。
助けるだけ助けて、姿を消すつもりなんだ。
『…………いよ、』
「ん? なに? 聞こえなかった」
マジョリカさんが何かを言った。
でも声が小さくて聞こえない。
俯いたままだからなおさらだ。
『……もういいよ。ウチ……黄泉の国に還る』
まただ……豊かな髪の星々から煌めきが消えていく。
どうして……?
なんで還っちゃうの……?
だってまだジャッキーさんに会っていない。
弥生さんの話だと、同じ家の中にいるんだ。
悪霊達をどうにかしなくちゃならないけど、すぐ傍にいるというのに。
「マジョリカ……どうした。アンタはジャッキーが好きで、離れたくないから現世に来たんだろう? アタシに一言文句言ってやろうと思って、不安だらけなのに頑張って来たんじゃないか。なに弱気になってんだよ。……まぁ、悪霊達に襲われて怖かったとは思う。だけど絶対に守るから、アタシとエイミーちゃんとヤヨちゃんで、必ず、」
『もういいっ!』
遮るように大声を上げたマジョリカさんは、肩を震わせ泣いている。
弥生さんを視て『ウチ、解ったんだ』と嗚咽を漏らしている。
何が……解ったの?
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