第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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いかん……女性二人の話がループし始めた。 マジョリカさんは『ウチだけ死者だし』とか『もう分からない』と言って泣いてるし、弥生さんは「アタシがみんな悪い」と今にも泣きそうだ。 ヤヨちゃんは、文字も降らせずただただ二人を見守っている。 僕はと言えば、キッチンをお借りしてお湯を沸かしてる所だ。 一度リセットをかけた方が良い。 「あのー、みなさん。こんな時になんですが、お茶などいかがですか?」 人ん()のお茶セット。 勝手にお借りして人数分の緑茶を淹れた。 本当ならすぐにでもジャッキーさんのところに行きたいトコだけど、女性陣がボロボロなのだ。 このままで、もしマジョリカさんが悪霊化でもしたら大変だ。 急がば回れって言うでしょ。 しゃがみ込んだ女性二人と立ったままのヤヨちゃんにも、めんどっちいので、それぞれの前の床の上、直接カップを置いていく。 僕もみんなの傍で正座をしてカップを持った。 「ヤヨちゃん、お茶美味しいから飲んでみて」 可愛らしいちびっ子に声を掛けて数秒すると、おすまし顔がふにゃりと崩れて【おいし オチャ おいし】の文字を降らせてくれた(ヨシ!)。 一方、見た目は若いが、結構イイ大人の女性達は死者のような顔で固まっている(ま、一人はリアル死者だけど)。 仕方がないので生者の方に声を掛けてみた。 「弥生さんもマジョリカさんに『どうぞ』って言ったげて」 ああ、とかなんとか。 間の抜けた声を出した弥生さんは、 「エイミーちゃんの淹れてくれるお茶は美味しいんだ。飲んでみてよ」 と声を掛けてくれた。 これでマジョリカさんも緑茶を味わえる。 気に入ってくれると良いんだけど。 本人が強く拒否をしない限り、生者が心から勧めてあげれば、口の中に食べ物や飲み物の味が広がるのだ。 マジョリカさんはイタリアの方だと聞いている。 このバリバリの日本茶にどんな反応を示すのか……と思っていたら、 『あ……おいし』 ヨシッ! お口に合ったみたいで嬉しいぞ。 ああ、時間があればなぁ。 ゴハンも作って食べさせてあげたいのに。 ま、今はそうもいかないので、この先、口寄せを覚えたら、仕事に関係なく僕が呼んでみんなでゴハンを食べたいなぁなんて思う。 ま、実現は難しいかもだけど、でも、でもさ。 緑茶効果でほんのちょっぴり、空気が柔らかくなったコトに調子に乗った僕は、シャキーン! とムーンラビット氏バリに挙手をした(覚えてるかな?)。 「マジョリカさん!」 急に話しかけられた美の女神は『な、なに?』と慌ててる。 「マジョリカさんは本当に今すぐ黄泉の国に還りたいですか? ジャッキーさんにも逢わないまま」 ビシッと指をさし、名探偵の雰囲気で(自分比)質問を投げる、と。 『……ううん……本当は逢いたいよ、逢ってちゃんと話がしたい』 しょぼーんと俯きボソボソと答えてくれた。 だよねぇ、まぁ分かってたけどさ。
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