第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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はぁぁ? めっちゃ嘘つきがいるんですけどー。 僕とヤヨちゃんに「ジャッキーに攻撃しないで!」って、半べそで頼み込んでたのは誰だよ。 斜め下を視れば、ヤヨちゃんも口元を歪ませていて、たぶん同じ事を考えている。 弥生さんとジャッキーさんがツーマンセルを組んでいた頃を知らないが、きっと今みたいな軽口でやり合っていたのだろう。 弥生さんの部屋で三人で話していた時とは違う。 部屋では、僕がいたからまだ抑えていたんだろうけど、それでももっと甘えたような、今みたいな姐御キャラではなく、女性らしくて、それでいて力の抜けた自然な口調だった。 マジョリカさんに少しでも不安要素を与えないように、気を遣ってるのがわかる。 「それより何故ここに……? 弥生がマジョを口寄せしたのか……? 二人と逢う資格なんて自分には、」 言いかけたジャッキーさん、それを弥生さんが強引に遮った。 「なんでって……バカかよっ! アンタが無茶するからだろ! 悪霊大量に取り込むとかナニ考えてんだ! 下手すりゃ死ぬぞ? つーかマジョリカに心配かけるな。どんだけ心配かけたと思ってる。ったく……いいか? マジョリカはな、アンタがバカな事言い出すから! たった一人で! 勇気出して! 現世まで来たんだよ!」 姐御の説教に「いや、それは、」とうまい返しが出来ないようで、ジャッキーさんは汗を垂らして口籠っている。 そんな弥生さんを、今度はマジョリカさんが複雑な表情で視つめていた。 「いいから反省しろっ! でもってアンタはマジョリカと話せ! ちゃんと顔視て話すんだ! 好きな子に見栄を張りたいとか、恰好つけたいとかじゃなくて、もっと本音でさ。現世で本当は辛かったとか、希死念慮に憑り付かれてたとか、その希死念慮も元はと言えば、マジョリカに逢えない辛さからくるものだったとか、そういうの、ぜーーーーんぶだ! アンタはアタシを好きになったって言ったけど錯覚だ。すべてはマジョリカに逢えない淋しさを埋める為だ。だってアンタは今、マジョリカの声で覚醒したじゃないか。それが答えだよ、」 ジャッキーさんの腕をバシバシ叩き、歯を見せてニカッと笑う。 辛いだろうに笑ってる、それが僕には心配でたまらなかった。
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