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「ウソだろ……また一からやり直しか、」
思わず漏らした弱音に、ヒョウさんが追い打ちをかける。
『そう、賽の河原と同じだよ。何度でも繰り返す。何度でも同胞は来る。志村の宝石はすごいな。第一陣、この辺り一帯の同胞達を呼びつくした。だが、第二陣はもっと範囲を広げた場所から引き寄せたんだ。どこまでも呼べそうだ。弥生達はここで霊力と体力が尽きるまで戦い続ける、限界が来て動けなくなった時、弥生の髪と心臓を頂こう。そうすれば弥生の霊力は俺の物だ』
マズイな……光る道の欠片は、地球と黄泉をも繋ぐ石。
下手すりゃ範囲を広げながら日本全国の悪霊達をこの場所に呼んでしまう。
いくらなんでも、それを僕と弥生さんで全滅させるのは不可能だ。
だが、僕達にはまだヤヨちゃんがいる。
あの子が助けに入ってくれれば……でも、それはマジョリカさんを独りにさせるという事だ。
いくら結界に守られてるとはいえ、万が一、結界ごとさらわれたら……
悩む僕の隣で弥生さんは新たな武器を構築させた。
「チマチマなんてやってられないな。武器を変える。パンツァーファウスト。携帯式対戦車擲弾だ。一発撃って使い捨ての武器だが、」
『使えよ、』
ヒョウさんが被せてきた。
弥生さんに話をさせる気はないようだ。
『俺は志村の身体で同胞達の中を動き回るから。その物騒なモノを好きなだけ撃ったらいいさ。ただし、撃った先には志村の身体があるかもしれないけどな』
「やっぱり当たったらマズイ?」弥生さんにこっそり聞くと、
「生者の身体なら致命傷にはならないと思う。けど、パンツァーファウストじゃあ火傷と同じようになる。ジャッキーには絶対に負わせたくないケガだ」
……そうだよね。
カースタントの事故を思い出させてしまうよね。
弥生さんは舌打ちしながらパンツァーファウストを消滅させた。
手がない。
ヒョウさんの思惑通り、延々悪霊と戦ったところで、霊力尽きたらやられてしまう。
どうしたらいいだろう……と、その時だった。
「エイ……ミーさん……」
目の前のヒョウさんが……否、
僕を“エイミーさん”と呼ぶのはジャッキーさんだ!
身体の主導権を取り戻したのか!?
いや、それにしては様子がおかしい……まるで瀕死状態だ。
とても辛そうな顔なのに、それでも彼は懸命に言葉を絞り出そうとする。
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