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「ジャッキー! アンタなのか? 中はどうなってる? 抑えられてるのか? このまま主導権取り返せるか?」
弥生さんが矢のように質問するも、ジャッキーさんはそれには答えず僕に向かってこう言った。
「……白……ポ現……隠れる……オタク幽霊……達……キミが……集めた……思い出し、」
言い終える前にジャッキーさんが消えた。
口調は再びヒョウさんになる。
『チッ! 少し気を抜いたらすぐこれだ。少しは中で大人しくしていろ!』
憎々し気に吐き捨てた後、集まった悪霊達に向かって、僕達と戦うように指示を出す。
弥生さんは盛大に舌打ちをした後、霊刀を二刀流で出現させた。
僕はというと……霊矢の印も結ばずに、ジャッキーさんの言葉が頭の中をグルグル回りだしていた。
白……黒十字様の事だ……神奈川の現場……ポ現……24人のヲタク幽霊達……最初は……僕達霊媒師に……警戒し隠れていた……それを集めた……僕が……霊力で……赤い珠を構築し……そこから……無数の赤い鎖を出して……ヲタク軍団……みんな吸着して……拘束した……そうだ、ジャッキーさんは、あの時と同じ事をしろと僕に言ってるんだ。
あの時、かつてないくらい電気を溜めた。
溜めすぎた電塊は暴走寸前、支えるのも難しくって、手から弾け飛びそうなのを水渦さんが助けてくれた。
増幅の印をかけてくれて、僕の霊力を30分限定で3倍にしてくれたんだ。
そのおかげで、大きくなりすぎた電気の塊を支え、ソレを使ってヲタク幽霊達を拘束する事が出来た。
今ココに水渦さんはいない。
だが増幅の印は動画の中に入っていた。
僕はそれを完璧に覚えてる。
「弥生さん! ちょっと耳貸して!」
……
…………
………………
弥生さんの二刀流が僕を守る為に宙を舞っていた。
目の前を何度も飛び回り、刃は何十体もの悪霊達を斬り付けている。
僕は弥生さんの背の後ろ、増幅の印から結んでいた。
霊矢に比べ工程は少ない。
正しく結びきれば僕の霊力は、時間限定だが3倍になる。
短い工程をすべて終えた時、ズンッ! と身体が重くなるのを感じた。
水渦さんにかけてもらった時とは明らかに異なる現象だ。
少々の不安は感じたものの、考えても分からないので、増幅分の霊力の重さだと思う事にした。
そうであってくれと願いつつ、そのまま両手を湾曲させて集中し、限界ギリギリまで電気を溜める。
黒十字様の部屋でそうしたように、手の中に電気で出来た小宇宙が暴れだすまでだ。
あの時はけっこう時間がかかったんだ。
なるべく早く、少しでも早く溜まってくれ……弥生さんが頑張ってくれてるんだ、早く休ませてあげたいんだ……って、えぇ!?
僕は自分の目を疑った。
電気がどのくらい溜まったのか、進捗状況を視る為に目線を下げると、湾曲した手の中には、既に完成された小宇宙がバチバチと火花を散らせていた。
や……なんで?
いや、早い分には全然良いけどさ……前は溜まるまで時間はかかるわ、溜まった後も、小宇宙はじゃじゃ馬娘のように暴れまくって、僕の手から逃れようと、右に左に上に下にと、形を楕円に歪ませてバウンドさせていた。
なのに今回、まるでお上品なお姫様のように、凛とした赤さで大人しく手の中に納まっている。
しかも、感覚でしかないけれど、じゃじゃ馬娘よりもっと濃い霊力を秘めているようだった。
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