第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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どうしてだろう、と疑問が頭をよぎったが考えてる時間はない。 弥生さんの息が上がってる。 さすがに2ターン目の戦闘だし、僕を庇って一人だし、早い所なんとかしないとマズイ。 僕の霊力(ちから)を溜めに溜めた電気の塊、この小宇宙に更に霊力(ちから)を加える。 そして仕上げに左右の両五指を接触させてショートさせるんだ。 その時に発生する大きなスパークが、ただの電気の塊を形状変化させる。 「弥生さん、もうあと十秒もなく発動する! それまで頑張って、お願い!」 大きな声でそう告げると、手を高く突き上げ「こっちは余裕! ゆっくりやんな!」と絶対ウソだろな返事をくれた。 あの人、痩せ我慢させたら日本一かもしれないな。 ヤヨちゃんとお揃いの、黒ワンピースが所々裂けていて「ごめん」と心でお詫びをしつつ、両五指を近づける。 接触まで、あと5センチだ、 4センチ、 3センチ、 2センチ、 1センチ____ ____ゼロッ! ドーーーーンッ!! まるで落雷のようなショート音が響き渡った。 僕は瞬間腰を落とし、前回学習した”電気の塊はめちゃくちゃ重くなる”に備えたのだが…… やっだナニコレ!  めちゃくちゃ軽いんですけどー! ウチの大福ちゃんの方が全然重たいしー! 前のじゃじゃ馬は体感的に100kgは超えてるんじゃないかってくらいだったのに(重いものはみんな100kg)、今、手にある小宇宙はせいぜい2~3kgの感覚だ。 うっひょーなんて浮かれる間にも、赤い電気の塊から数多な鎖が伸び、うねりながら速度を持って、それぞれ狙った悪霊達を次々吸着し捕らえ拘束していく。 ヨシ! 行けっ! 全員逮捕だーーーっ! 鎖は僕の意思を多少引き継いでいるのか、真っ先に弥生さんの戦闘相手から捕らえていった。 弥生さんは目の前で鎖の触手が悪霊を捕まえるのを視て、すぐに僕を振り返り「スゲェ……マジかよ……」と言う。 そっか。 神奈川のポ現の現場に弥生さんはいなかった。 電気鎖(コレ)を視るのは初めてだよね。 「ジャッキーさんからアドバイスを貰ったんだ。放電が出来るなら応用してみようって」 僕がそう答えると、 「そっか、ジャッキーが……またアイツに助けられたな……へへっ。エイミーちゃん、やるじゃんか! サイコー!」 余裕! とか言ってたクセに、やっぱりキツかったんだろうな……だって額に汗が浮かんでるし、肩で息してるもの。 それでも、ジャッキーさんのアドバイスで得た術が、回り回って弥生さんを助けたってコトがすごく嬉しいみたいで、めちゃくちゃ良い顔で笑ってくれた。 第二陣の悪霊達。 うわぁ……こんなにいたんだってくらい捕まえた。 僕の手から伸びる電気の鎖はガッチリと拘束し、喚き怒鳴る悪霊達を逃さない。 この中にヒョウさんもいるかと期待したが、生者の身体を捕らえる事は出来なかったらしく……どこにいるのかと辺りを視ると……いた。 彼は今、手入れのされていない植え込みの隙間から、悔しそうに僕らを睨みつけていた。
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