第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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僕と目が合ったヒョウさんは、一瞬逃げようとしたものの、開き直って植え込みから姿を現した。 『男……おまえは大して霊力(ちから)が無いと思っていたのに、』 歯ぎしりでもしそうな勢いだ。 燃えるような目で僕を凝視する。 「オマエ、バカかよ。エイミーちゃんはな、ウチの会社で一番霊力(ちから)を持ってる男だぞ? 視る目ないなぁ、ったく」 ど、どうだろう? 先代はそう言ってくれるけど、現段階でやっと僕は、放電と鎖と霊矢が使えるようになったばかり。 あんまりハードル上げないで。 「どうすんだ? 第三陣でも呼ぶか? 呼んでいいぞ? 呼んだところでまたウチのエイミーちゃんが拘束するけど」 や……ちょ、ヒョウさん挑発しないでよぉ! 弥生さんには言ってないけど、この電気鎖、僕が手を離すと消えちゃうんだ。 ジャッキーさんに「手は離しちゃダメだぞ!」って前に言われたもん。 これでもし、ヒョウさんが『第三陣カモーーーーン!』なんて言い出したらマジヤバイっす。 その事を、絶っっっ対にヒョウさんに聞かれないよう、弥生さんに伝えたいんだけど、そんなん、めっちゃミッションインポッシブル、不可能だ。 弥生さんは「へっ! バーカバーカ」と挑発しまくってるけど、いいから先に集めた悪霊滅しちゃってよーん! だけど駄目だ……弥生さん、ヒョウさんに絡んでてコッチを見やしない。 むぅ…… そ、そうだ! ヤヨちゃん! 滅するのをちびっ子に頼めないだろうか? 鎖発する電塊を手にしたまま、公園入口辺りにいるはずのヤヨちゃんとマジョリカさん(IN結界)を振り向くと……なんですとーーー!? えげつない霊力(ちから)を持ってるヤヨちゃんは、寝てた所を途中で起こされ電池切れ、守るように結界に抱き着きながら、くかーっと寝てるっ! まさかのオネムーーー! マジかーーー! でもちっちゃい子だしーーー! 夜更かしさせちゃってるからーーー! 仕方ないっちゃあ仕方ないけどもーーー! ああ……きっとアレだ。 僕が悪霊達を全員拘束したから、ちょっとくらい居眠りしても平気かなと思っちゃったんだろな。 マジョリカさんは鉄壁を誇る結界に入ってるし、悪霊いないし、ムニャムニャ的な。 ヤバ……どうしよ。 僕のこの焦りが、顔に出てしまったのだろう。 ヒョウさんは目ざとくこう言った。 『男……さっきからキョロキョロ落ち着きがないな。何か心配事か? どこを視ていた……鎖? ふむ……もしかしてこの拘束に関して何かあるのか?』 急に振られて心臓がドキンと跳ねた。 結果、 「……いや? 別に? 何も?」 僕の返しは最悪だった。 『何も……か。それにしては挙動不審だ。第一陣の同胞は皆滅したというのに、第二陣は拘束のまま滅さない……そしてその赤黒い塊を後生大事に持ったまま。もしかして、拘束の鎖はその塊を壊せば消えてなくなったりして、』 ハイ! ほぼ正解! 壊さなくても手から落とすだけで、鎖は消えちゃいマース! 汗が流れる……弥生さんは「え、そうなの?」と僕を見た。 そしてヒョウさんは、まるで大好物の食べ物を目の前にしたような、そんな良い顔でニヤァと笑ったのだ。 アイタ……これ、めっちゃヤバイパターンだ。
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