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僕と目が合ったヒョウさんは、一瞬逃げようとしたものの、開き直って植え込みから姿を現した。
『男……おまえは大して霊力が無いと思っていたのに、』
歯ぎしりでもしそうな勢いだ。
燃えるような目で僕を凝視する。
「オマエ、バカかよ。エイミーちゃんはな、ウチの会社で一番霊力を持ってる男だぞ? 視る目ないなぁ、ったく」
ど、どうだろう?
先代はそう言ってくれるけど、現段階でやっと僕は、放電と鎖と霊矢が使えるようになったばかり。
あんまりハードル上げないで。
「どうすんだ? 第三陣でも呼ぶか? 呼んでいいぞ? 呼んだところでまたウチのエイミーちゃんが拘束するけど」
や……ちょ、ヒョウさん挑発しないでよぉ!
弥生さんには言ってないけど、この電気鎖、僕が手を離すと消えちゃうんだ。
ジャッキーさんに「手は離しちゃダメだぞ!」って前に言われたもん。
これでもし、ヒョウさんが『第三陣カモーーーーン!』なんて言い出したらマジヤバイっす。
その事を、絶っっっ対にヒョウさんに聞かれないよう、弥生さんに伝えたいんだけど、そんなん、めっちゃミッションインポッシブル、不可能だ。
弥生さんは「へっ! バーカバーカ」と挑発しまくってるけど、いいから先に集めた悪霊滅しちゃってよーん!
だけど駄目だ……弥生さん、ヒョウさんに絡んでてコッチを見やしない。
むぅ……
そ、そうだ!
ヤヨちゃん! 滅するのをちびっ子に頼めないだろうか?
鎖発する電塊を手にしたまま、公園入口辺りにいるはずのヤヨちゃんとマジョリカさん(IN結界)を振り向くと……なんですとーーー!?
えげつない霊力を持ってるヤヨちゃんは、寝てた所を途中で起こされ電池切れ、守るように結界に抱き着きながら、くかーっと寝てるっ!
まさかのオネムーーー!
マジかーーー!
でもちっちゃい子だしーーー!
夜更かしさせちゃってるからーーー!
仕方ないっちゃあ仕方ないけどもーーー!
ああ……きっとアレだ。
僕が悪霊達を全員拘束したから、ちょっとくらい居眠りしても平気かなと思っちゃったんだろな。
マジョリカさんは鉄壁を誇る結界に入ってるし、悪霊いないし、ムニャムニャ的な。
ヤバ……どうしよ。
僕のこの焦りが、顔に出てしまったのだろう。
ヒョウさんは目ざとくこう言った。
『男……さっきからキョロキョロ落ち着きがないな。何か心配事か? どこを視ていた……鎖? ふむ……もしかしてこの拘束に関して何かあるのか?』
急に振られて心臓がドキンと跳ねた。
結果、
「……いや? 別に? 何も?」
僕の返しは最悪だった。
『何も……か。それにしては挙動不審だ。第一陣の同胞は皆滅したというのに、第二陣は拘束のまま滅さない……そしてその赤黒い塊を後生大事に持ったまま。もしかして、拘束の鎖はその塊を壊せば消えてなくなったりして、』
ハイ! ほぼ正解!
壊さなくても手から落とすだけで、鎖は消えちゃいマース!
汗が流れる……弥生さんは「え、そうなの?」と僕を見た。
そしてヒョウさんは、まるで大好物の食べ物を目の前にしたような、そんな良い顔でニヤァと笑ったのだ。
アイタ……これ、めっちゃヤバイパターンだ。
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