第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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~~結界卵の中から・マジョリカ~~ 守られた卵の結界。 紫色の透明な壁は、大倉弥生達の戦いのすべてを視せてくれた。 特殊部隊が動く悪霊でさえ滅してしまう霊媒師。 実際に戦う姿を視るのは初めてで、ウチはもう大倉に釘付けだった。 二本の刀を振り回し悪霊達を滅する姿は、圧倒的に強くって、次々敵が倒れていって、白雪ちゃんとはまた違う強さに胸がドキドキして、ぽーっと視てた。 あっという間だった。 たくさんいた悪霊達は、たった二人に滅された。 これで終わったんだと、ホッとして少しした頃……ウソでしょ……? 空から地面から、さっきと同じくらいたくさんの悪霊達がやってきたんだ。 二人はまた戦い始めた。 さすがの大倉にも疲れが視えて……なのに……おかしいよ。 岡村がジッとしたまま動かない。 大倉一人でカタナを振っている。  どうしたの……?  お願い岡村、大倉を助けてあげて!  そうハラハラしてたら、背中を向けてる岡村が真っ赤に光ったの。 一瞬それは花火に視えた。 だけど違くて、数えきれない電気の鎖が放射線に伸びたものだったんだ。 その鎖は一本一本、意志を持った生き物みたいに飛び回り、悪霊達を一人残らず縛り上げてしまった。 すごい……! 岡村は穏やかで優しくて、美味しいお茶を淹れてくれて、争い事とは無縁に視えるのに……あんなに強くて、数えきれない鎖を使って、悪霊達をみんなみんな捕まえた。 ココは黄泉じゃないのに、指を鳴らすだけでなんでも出せるんじゃないのに……現世の霊媒師って……みんなこんなにすごいの? 怖いけど、ドキドキが止まらない……こんなの黄泉じゃ絶対ないもの。 ああ……ジャッキもすごいんだろうな……! だって平蔵が教えてくれた。 ____ジャッキーさんは他の誰にも真似出来ない特別なスキルを持ってるんですよ、 って。 ウチの旦那さん……すごい人だったんだ。 ジャッキのコト、もっともっと知りたいよ。 外を視ると岡村は悪霊達を拘束中だし、大倉はジャッキと……ううん、違う。 あれは悪霊だ……ジャッキの中の(・・)悪霊と話してるんだ。 もう……大丈夫だよね? 最初の悪霊達は大倉と岡村がみんな滅してくれた。 ジャッキの中の悪霊に、もう味方はいないもん。 後は鎖に縛った悪霊達を滅して、ジャッキの中の悪霊も追い出したら解決だよね? 【エイミ ワルイやつ つかまえタ もう あんしん】 ヤヨイはそう言って、ふにゃふにゃ笑うと目を擦りウトウトし始めた。 外から卵をヒシッと抱いて、【テキが きたら すぐ おきるよ】って、目をショボショボさせてすごく可愛いの。 ウチを守る為にずっと一緒にいてくれる。 ヤヨイ、ありがとね。 大倉も岡村もヤヨイもジャッキも……疲れただろうな。 みんなで一緒にジャッキのオウチに帰ろう。 少し眠って……その後ジャッキと二人にしてもらうんだ。 話がしたいよ。 ”もう逢えない”なんて取り消してほしいよ。 今のジャッキが何を考えてるのかぜんぶ教えてほしい。 ウチの気持ちも聞いてほしい。 ジャッキが大倉を好きになっても、それでも嫌いになんかなれないの。 大好きだもん、だからたくさん話がしたい。 それと……それとね、それだけじゃ駄目なんだ。 ウチとジャッキと大倉弥生、三人でも話したい。 だってさ、大倉だけを悪者にして終わりには出来ないよ。 そんな単純な話じゃない。 今ならわかる……今回のコト、ただの”悪さ”じゃないんだよ。 だから話さなくちゃいけない。 これからどうしたら良いか、その答えを見つける為に。 星は答えを知っている。 だけど教えてはくれないもの。 だからとことん話すしかないんだ。
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