第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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とことん話す。 そう決心したら、まだ何も解決してないけど気持ちが少し楽になった。 少なくとも、これからどうしたらいいか、その方向性が見えた気がしたんだ。 早くみんなで帰りたい。 そう思って外を視ると……え? 何が起きてるの……? ジャッキの中の悪霊が、ジャッキの身体を使って岡村を殴りつけている。 や、やめて! 何してるの! ジャッキの身体で酷い事しないで! 殴られた岡村は、逃げもしないでそこに立ったままだ。 悪霊はそんな岡村をもう一度殴る気なのが手を振り上げている。 逃げて! 岡村逃げて! 大倉は二人の傍で何か言っている。 結界の中だとあまりよく聞こえないけど、 「ジャッキー! なんとか表に(・・)出てきてくれ!」 多分こう言った。 そしてそのまま、手を振り上げたジャッキにしがみついて暴力を止めようとしている……何がどうなってるの? 終わりじゃなかったの……? どうしよう……どうしたら……あっ! 『ヤヨイ! ヤヨイ起きて! 大倉と岡村がピンチだよ!』 卵の内側をドンドン叩いてヤヨイを起こす、お願い、起きて! 透明な壁にほっぺをくっつけてた女の子はすぐに目を開けた。 ウチと目が合い、ちっちゃな手をフリフリさせている。 『ヤヨイ! 後ろ! 後ろの二人を視て!』 ウチは大声で叫びながら、公園の中にいる大倉達を指さした。 【うしろ?】 少ない文字が地面につく前に、ヤヨイはクルリと背を向けた。 その目には、大倉と岡村の姿が映っているはず。 二人のピンチに気付いてくれたはずだ。 ウチは卵にいるから一人でも大丈夫。 だからお願い、すぐに助けてあげて……! 【まじょりか まッてて すぐに もどル】 ヤヨイの言葉が空から降ってくる。 『分かった、気を付けて』 ウチがそう言い終わる前、ヤヨイはすでに駆け出していた。
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