第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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ヒョウさんは今の所大人しい。 というか地面に倒れ、うんうん唸っている。 なんたって天から”リンゴ大&リンゴに等しい重量”の文字が大量に落ちてきて、全身ゴチゴチとぶつかったのだ。 いくらジャッキーさんの身体が鋼の筋肉で構成されていても、ヘルメットもかぶらない頭に、リンゴライクなモノがあんなに落ちれば、そりゃあフラっとなっちゃうよ。 心配ではあるけども、できればそのまま大人しくしててほしいところだ。 で、ヤヨちゃんはというと、とうとう沈没した。 今はムニャァと可愛い寝息を立てている。 ありゃー、完全電池切れだよ。 柔らかな長い髪を一撫ぜ、二撫ぜ。 幸せそうに眠る女の子は、弥生さんの腕の中でサラサラと砂となって消えた。 「仕方ないな。ちょっと無理させちゃったもの。だけどこれでマジョリカの結界が消える。ヤヨちゃんの結界程強くはないけど、アタシが防御陣を展開させて、あの子の結界代わりにする。ちょっと待ってて、すぐに行ってくるから。それが終わったら、ヒョウさん(コイツ)が伸びてるうちに、雑魚共を滅しよう」 弥生さんがマジョリカさんの元へ駆けた。 視れば、急に卵の結界が消えてしまって不安そうにしている。 女性二人は何やら話をしていたが、それが終わると弥生さんはマジョリカさんを守るべく、ドーム型の防御陣を展開させた。 3~4人は余裕で入れる”かまくら”くらいの大きさだ。 それをイチ、ニィ、サン、シィ、ゴ……と、マトリョーシカ方式に重ね、防御力を上げている。 ヤヨちゃんの卵型結界と大きく違うのは、結界壁は透明ではあるけれど、六芒星を中心とした幾何学模様が全体に描かれて、壁の向こうが視えにくいという所だ。 それが五枚も重なってるんだから視界は相当悪そうだ。 弥生さんが駆け足で戻ってきた。 「ごめん、待たせた。さ、今のうちに捕まえた悪霊共を滅しちゃおう。そうすればエイミーちゃんの両手が空く」 待ってました! ずっと同じ体勢で、特に腕がプルプルし始めてたのよね。 僕の手の中の赤黒い小宇宙、電気の塊からは途中数えるのを止めたけど、おそらく百以上の鎖が伸びている。 その先にそれぞれ悪霊達を縛り上げているのだが、僕の目には生者に視える者、それから妖怪化であろう異形の者達が鈴生りとなっている。 全体の大きさは目測直径10m程、形としては歪んだ球体に近いだろうか? 鎖の力で、悪霊達は宙に浮かんでいるのだが、前回の黒十字邸オタク幽霊達とは違い、重量というものはほとんど感じない。 それが唯一の救いだ。 この人数の重さを感じてしまったら、きっとリアルに潰れるもの。 弥生さんがさっき出しかけて引っ込めた、パンツァーファウスト出現させた。 うわぁ……てか、ホントに物騒な武器だなぁ。 でも威力はありそうだ。 これだけの悪霊達も数発で滅する事が出来る。
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