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~~防御陣の外へ・マジョリカ視点~~
大倉弥生が造ってくれた結界は、防御陣を五重にしたものだ。
黄泉の国の移動の陣とは、また構築式が違う。
大倉のはもっと複雑で、しかも重なっているから外の様子が分かりにくい、だけど外の音はよく聞こえる。
ウチは耳を澄ませながら陣の内側から視続けていたんだ。
途中、大倉はジャッキの顔をした悪霊に地面に叩きつけられた。
ウチは思わず悲鳴を上げた。
あんな事、生者の、しかも女の人がされたら死んでしまう。
今はまだ大倉に光る道なんて伸ばしたくない、どうか生きていてと祈ってた。
大倉はなんとか意識はあるみたいだったけど、蹲って動けないでいた。
地面の上に背中を丸めて……視ていて涙が止まらなかった。
ウチはなんでこんなに無力なんだろう。
あの子はウチより二つ年下だ。
年だけ見れば妹だ。
なのに大倉ばかり危険な目に合せて、ウチ一人が安全な場所に隠れてる。
ジャッキが好きになってしまった生者。
最初は嫌いで憎たらしくて、心のどこかで、いなくなればいいのにと思ってた。
だけど今はそう思わない。
そんな事を思ったウチは、自分が恥ずかしいとさえ思う。
だって、大倉は?
大倉だって、ウチがいなければジャッキと一緒になれるのに。
大倉くらい強ければ、ウチを滅するのなんか簡単なのに。
あの子はそうしない。
それどころか、あんなになっても守ってくれる。
ヤヨイの結界が消えた時、あのまま忘れた振りをしてれば、もしかしたらウチは、他の悪霊に消されてしたかもしれないのに……だけど走ってやって来た。
____ジャッキーが得意な防御陣だ、同じの展開するからな、
____念のため重ねるか……ヨシ、五重にしよう!
____戦ってる最中も視てるよ、何かあったら飛んでくる、
____もし、もしも、この陣突破されて危険になったら、
____大声でアタシを呼んで、
____絶対に守るから、死んでもマジョリカを守るから、
傷だらけの泥だらけ。
ヤヨイとお揃いの黒いワンピースは所々切れてるし。
なのに真剣な顔でさ、あんな事言われたらさ。
ああ、もう気持ちがグチャグチャだ。
黄泉の国にいたら、絶対こんな気持ちにはならないのに。
現世は困難ばかりで怖い所、ジャッキがいて大倉がいる所。
現世にいると心が乱れる、すごく考えさせられる。
ウチには霊力もなければ、腕力もない。
大倉みたいに戦えないし、岡村みたいに鎖も出せない、ヤヨイの結界も造れない。
ただただ守られるだけ……でも仕方ないじゃない。
ウチはただの死者だもの、弱いんだもの。
霊媒師はその道のプロだ、比べたって仕方がない。
何も出来ないよ____
本当?
本当に何も出来ないの?
本当に守られるだけでいいの?
……
…………
………………さっき大倉は、
操られたジャッキが、ジャッキの胸を切ろうとした時。
身体が痛くて動けないのに、戦えないのに、それでも諦めないで、素手でナイフを掴もうとしたよ。
泣きながら、ジャッキを助ける為に、生者だから傷は痛むし治りも遅い。
なのにあの子はそうしようとした。
だから、ジャッキは戻ってきたんだ。
大倉を助ける為に。
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