第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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いきなりこんな事を聞き始めたウチに、大倉弥生は目をパチパチさせている。 ウチでも出来る事、どんなに小さな事でもいいから探りたい。 だからもう少しだけ教えてほしい。 『ごめん、ウチを優先してくれたんだね、ありがと。ねぇ、ウチが家に戻ったとして、ジャッキの悪霊はどうやって滅するの? 大倉は霊力(ちから)は使えるかもだけど、身体が動かせないなら滅する事は難しいよね。そこはどうするの?』 この質問にはすぐにジャッキが答えてくれた。 「自分がバラカスのサーバーにアクセスする。もう使わないなんて言った手前カッコ悪いけど、緊急事態だ。後で謝り倒すさ。霊力(ちから)を得られれば滅するのはたやすい。自分の中の悪霊も、拘束された悪霊も一掃できる」 『バラカスはジャッキがアクセスしたって怒らないよ。逆にさ、最近アクセスログが無いって心配してたもの。ねぇ、ジャッキ。サーバーにアクセスして霊力(ちから)がロードされるまでの時間は?』 「ん……大体、一分から三分かな」 『ちょっと長いね……あ、それとジャッキの中に霊力(ちから)が入って、それを使えるのはジャッキだけ? 中の悪霊が使う可能性は?』 「……ゼロじゃないな。もしそのタイミングで身体を乗っ取られたら、霊力(ちから)を使われてしまう。かといって先に追い出すのはリスクが高い。すぐに拘束出来れば良いが、弥生は負傷、エイミーさんは動けない。そのエイミーさんは、霊体への物理干渉が可能だが、逆も然り。自分の中の悪霊が外に出て、真っ先にエイミーさんを襲ったら……後ろから背中をひと蹴りしただけで、拘束された悪霊達を全開放してしまうかもしれない」 『危険だね……』 聞けば聞く程リスクが高いし、勝率も下がる。 こんな大雑把な、行き当たりばったりの方法じゃあ全滅しちゃうよ。 ヤヨイはおねんね中だし…… 「マジョリカ、もういいだろ。色々リスクはあるけどやるしかないんだ。アタシらは霊媒師で、このくらいのリスクは慣れっこだ。マジョリカは何も心配しなくていい。とにかく安全な所で待っててほしい」 ボロボロの傷だらけのクセに、今は大倉こそ安全な所に行くべきなのに。 ジャッキもそうだ。 リスクも高いし、失敗する可能性が高いのに、それでもやろうとしてる。 というか、これしか方法がないんだ。 こんな作戦では事故が起こる。 怪我をするか、もしくは命を落とすか。 ヤダよ……そんなのは絶対にイヤだ。 生者の命は有限だ、いつか必ず終わりがくる。 ジャッキの命が終われば一緒に黄泉に還れる……けど、だけどさ、こんな事で、こんな理由で、無駄に命を終わらせてほしくないよ、絶対に後悔と悔しさが残るもの。 誰かの為にこんなにも頑張る生き人達。 岡村も大倉も、そしてジャッキも生きなくちゃいけないんだ。 だからまだ三人に光る道なんて伸ばしたくない。 それにはどうしたら良いんだろう……どうしたら……あ、 そうか、そうだよ! 『ねぇ、大倉! ジャッキ! 今ココにいるのは全員悪霊で間違いないんだよね?』 声が大きくなっちゃった。 だけど見つけた! ウチに出来るコト! ウチにしか出来ないコト! これでなんとかなるかもしれない!
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