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~~マジョリカの作戦・弥生視点~~
AM5:06
だいぶ空が明るくなってきた。
マジョリカの作戦が上手くいけば、もうあと少しで全てが終わる。
そうなれば、今度こそ二度とジャッキーに逢えなくなるんだ。
いや……考えるのはよそう。
本当なら今日だって逢えないはずだった。
だけど逢えたんだ。
最高のサプライズだよ。
あとは、ジャッキーとマジョリカが仲直りしてくれたら他に言う事はない。
作戦の内容をエイミーちゃんに伝えてるのはジャッキーだ。
拘束中の悪霊達に聞かれないように、野郎が野郎の耳に内緒話で伝えてる。
ま、説明はアタシよりジャッキーの方が上手だからね、適材だ。
ジャッキーを待っている間、ソワソワ空を見上げるマジョリカに声を掛けた。
「なぁマジョリカ……色々ごめんな。ジャッキーの事もそうだし、怖い思いも沢山させちゃった。せっかく現世に来たのに散々だったよな。全部終わったらアタシとエイミーちゃんは帰るから、ジャッキーと話し合ってよ」
『ん、』と振り向くマジョリカはめちゃくちゃ綺麗で、髪ボサボサで泥だらけのアタシは、なんだか自分が恥ずかしくなってしまった。
この子には何から何まで勝てる気がしない。
「さっきも言ったけど……アイツがアタシを好きだと言ったのは、マジョリカに逢えない辛さから錯覚したんだ。本当に好きなのはマジョリカだけ、だから心配しないで。アタシももう吹っ切れたしさ。……それと、しばらく現世にいたらどう? 現世でジャッキーといっぱい話して甘えればいいよ。帰る時に連絡してくれれば、ヤヨちゃんに行ってもらうからさ、」
泣くな、泣くなアタシ。
泣いたらマジョリカが気にしちゃう。
この子は優しい子だもの。
もっと怒ってアタシを責めたっていいのに、そうしない。
ジャッキーにちょっかい出したジャマな女だっていうのに、アタシの怪我を心配して泣いてくれたんだ。
『ん、アリガト。ジャッキがいいって言ったらそうしたいな。帰りたくなったら連絡する、その時はよろしくね。……ウチ、ジャッキと話したい。気持ちをぶつけ合いたい。今までジャッキの話を聞けてなかったなって反省したんだ。これからはジャッキの話いっぱい聞きたいよ。特別な事じゃなくても良いから、その日あった事、嬉しかった事、それから嫌だった事も』
「うん、それがいい」
『あと……大倉、まだ帰らないでよ』
「え……? なんで? アタシがいたらジャマだろ? いいよ、帰るよ」
『ううん。ウチがジャッキと二人で話した後、三人でも話したいの。そうじゃないと何も解決しない気がする。ウチ……視ててわかったんだ。大倉は錯覚だと言ったけど、ジャッキは……やっぱり大倉が好きだよ。それは”浮気”とか”悪さ”とか、そういうレベルじゃない、ウチを嫌いになったんでもない。ウチと大倉、二人を本気で好きになっちゃったんだ、』
少し淋しそうに、それでもアタシを責める口調ではなくそう言った。
マジョリカの言う通りだ……本当はアタシも知っている。
アイツは二人の女を同時に愛してしまった。
そして、”もう誰にも嘘はつきたくない”と、どちらかを選ぶんじゃなく、どちらも諦めたんだ。
ホントバカかよ……もっと上手くやれよ。
って……上手く立ち回れないんだよなぁ、あの男は。
だからアタシが消えるの。
今なら、きっとそれでうまくいく。
悪霊騒ぎでバタバタしてるし、なにより現世に来てくれたマジョリカと八年ぶりに逢えたんだ。
アイツはこの子の顔を視て、声を聴いて、変わらない優しさに、愛情は今まで以上に溢れだすに決まってる。
あとは愛した女の片方が……そう、アタシが完全にいなくなれば、アイツは迷わなくて済むはずだもの。
アタシが黙っているとマジョリカは、
『……ジャッキだけを責めるのも、大倉だけを悪者にするのも簡単だ。でも、それじゃあ解決しない。だからってどうするのが正解か分からないけど……それを見つける為にも三人で話したいの』
そう言われてアタシはなんて答えていいのかわからなかった。
三人で話したって結果は変わらない。
アタシの願いはジャッキーとマジョリカに仲直りをしてもらいたい、それだけだ。
それでも……アタシの存在が、ジャッキーを想い続けた七年の恋が、マジョリカを苦しめた事に変わりはない。
マジョリカが望むなら、三人で話したいというのなら、アタシがそれを拒んじゃいけないんだ。
これが本当に最後だ。
「わかった、残るよ。三人で話をしよう」
マジョリカはそう答えたアタシに『アリガト』とだけ言い、再び空を視上げた。
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