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ジャッキのオウチに着いて、泥だらけの生者三人は順番にシャワーを浴びた。
その後、疲れも眠さも限界を迎えた大倉と岡村は、気を失うように眠ってしまった。
大倉は一階の客間、岡村はリビングのソファでだ。
ウチはそっと客間に入り込み、大倉の寝顔を眺めていた。
シャワーを浴びて、ジャッキの大きなシャツを着て、身体を丸めて眠っている。
視れば、腕に、頬に、首に、小さな切り傷がたくさんあって、布団からはみ出た脚も、やっぱり傷だらけの痣だらけだった。
それと……髪。
綺麗で長かった黒髪は、毛先もまばらでザクザクで、うんと短くなってしまった。
大倉はウチを守る為、ウチを助ける為に、迷いもしないで髪を切った。
ごめんね……大倉の大事な髪、ウチのせいでごめんね。
大倉が来てくれなかったら、ウチは地獄に流されていた。
【闇の道】はね、一度上がってしまえば悪霊はもちろん、それが善霊であっても決して逃がしてはくれない。
ウチが焼かれる事なく、今こうしてジャッキのオウチにいられるのは、大倉が助けてくれたからだ。
ねぇ、どうして?
身体はボロボロなのに、大倉だって危険なのに。
どうしてそこまでするの?
どうしてそこまで出来るの?
ウチは大倉の事____
「マジョ、」
静かにドアを開けたジャッキがウチを呼びにきた。
『寝なくていいの?』って聞いたけど「大丈夫だよ」と答えるジャッキに連れられ二階の部屋に行ったんだ。
中に入ると、そこはジャッキの趣味のモノで溢れかえっていた。
たくさんの小説と漫画とDVD、それから色んなキャラのフィギュアもあって、中にはジャッキの大好きなジャッキー・〇ェンフィギュアもあった。
部屋の中にあるモノの半分以上、知らないタイトルばかりだったけど、みんなジャッキの好きなモノなんだと思ったら、そのすべてが特別で愛しいモノに感じられた。
ジャッキはこういうのが好きなんだな、ウチ、初めて知ったよ。
嬉しいなぁ、ジャッキのコト、もっともっと知りたいよ。
「自分の部屋にマジョがいるなんて、まるで夢みたいだ」
ジャッキはそう言って、すごく優しい顔で笑ってくれた。
二人向かい合って立ったまま、触れ合う事は出来ないけど、お互いの手のひらを重ね見つめ合った。
あれから八年が経ったんだ……ジャッキ、少し老けたな。
目尻のシワが増えてる。
そうだよね、出逢ったのはちょうどジャッキの誕生日で40才になったばっかりだったんだ。
今は48才、老けて当たり前だ。
生者は年を取るんだもの。
なのに……ウチは……ずっと17才のままだ。
ウチも生者だったらなぁ、そうすればジャッキと一緒に年が取れるのに。
同じようにシワが増えて、「マジョも老けたなぁ」なんて言われてさ、「お互いさまでしょう」って笑うんだ。
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