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『ジャッキ……もっとよく顔を視せて』
ウチよりもずっと背の高いジャッキ。
今は身長差すらももどかしい。
もっと近くがいいよ。
もっと……もっと近くで顔が視たいの。
ジャッキは「ここに座って」とフカフカなラグの上を指さして、ウチが座ると、すぐ隣の近い距離に座ってくれた。
ん……さっきよりも、ずっと近くになったよ。
嬉しいなぁ……泣いちゃいそう。
隣に座るジャッキの横顔。
耳には白雪ちゃんがくれたお揃いの赤いピアス。
ずっとつけてくれてるんだね。
ウチのコト、好きでいてくれてるんだね。
だけど、大倉のコトも好きなんだ。
切なくて胸が苦しくなるよ。
八年前、二人が恋に落ちたあの日、何度も何度もキスをした。
キスをするたび、愛しさと幸せでいっぱいになったの。
ねぇ、ジャッキ。
ここが黄泉の国なら良かったと思わない?
そしたらキスが出来るのに、抱き締めてもらうコトも出来るのに。
沈黙が続く。
なにから話せばいいんだろう?
まずは……
白雪ちゃんから聞いたあのコトかな?
ん……これは慎重に話したい。
じゃあやっぱり、大倉のコトかな?
そうでなければ、ジャッキが今なにを考えているのか、かな?
ほかにもいっぱいあるよ。
いっぱいありすぎて頭の中が渋滞してる。
うまくコトバが出てこない。
もしかして……黙ったままのジャッキも同じなのかな?
ジャッキの頭の中も、ウチと同じで渋滞してるのかな?
まだ何から話していいのか分からないのに、決まってないのに、なのにウチは『ジャッキ、』と名前を呼んでいた。
ああ……いつものクセがでちゃったな。
ウチはジャッキのいない黄泉で、いつだって無意識に名前を呟いてたの。
ワザとそうしてるんじゃないのに、大好きで逢いたくて淋しくて、そういう時、ジャッキの名前を口にするだけでココロがふわんと幸せになった。
ジャッキは言ってたな。
____自分の方がアナタを想ってる、
____好きで好きでたまらない、
って。
ちがうよ。
ウチ、言ったでしょう?
お互いに大好き同士でも、ウチの方がずっとずっと大好きなんだ。
だってジャッキはウチの初恋だもの。
初恋の人と結婚出来たウチはすごく幸せだ。
八年間、逢えない代わりの毎晩のおしゃべり。
たわいのない内容で、話の途中で何度も「愛してる」と言い合った。
ジャッキは仕事でどうしても連絡が入れられない時、ウチが待ちぼうけにならないように、前もって事情を話してくれたの。
風邪を引いてる時だって連絡をくれたよ。
ゴホゴホ咳をして辛そうなのに「マジョの声を聴いたら治るんだ」って言ってくれた。
ウチが光道の仕事で大変なコトがあれば、愚痴っていいよっていっぱい話を聞いてくれた。
最後には必ず「マジョが頑張ってるコトは、自分がちゃんと知ってるよ」って言ってくれるんだ。
それから、それから、いつもはガマン出来るのに、たまに、自分をコントロールできないくらい逢いたくなる時があってさ『淋しいよ、逢いたいよ』とウチが泣けば「辛い想いさせてごめんな。自分も逢いたいよ、」って気持ちを分かってくれたんだ。
ジャッキはいつだって優しい。
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