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『ん……ウチ、悲しかったよ。ずっと上手くいってると思ってたのに、突然「もう誰にも嘘はつきたくない、マジョに逢う資格は自分にはない、だからもう逢えない」そう言われてパニックになったの。なんで? どうして? って思った。でも……今なら分かるよ。ウチにとっては”突然の話”だったけど、ジャッキにとっては”ずっと抱えてきたコトの結論”だったんだよね』
最初に聞いた時はパニックになったけど、今は……なんとかダイジョウブだ。
泣かないように、感情的にならないように、落ち着いて話さなくちゃ。
ジャッキの気持ちが知りたい、知れば辛いかもしれないけど、でもやっぱり思うよ。
今回のコト、ジャッキだけを責めるのは簡単だ。
だけどそれじゃあ何も解決しない。
このままジャッキの言う通り、もう逢わない、もう別れるというなら話は別。
だけどウチ、そんなのはイヤなんだ。
ウチはジャッキが好きで好きで仕方がないんだもの。
生者と死者の夫婦は、現世と黄泉で離れ離れ。
顔を視て話す事が出来ない。
それが出来たなら、きっとこんなにすれ違うコトはなかったよ。
でも今、顔を視て話してるんだ。
こんな機会めったにない。
諦めたくない。
____めでたしめでたしのお伽話には続きがある、現実がある、
現実なんかに負けたくないよ。
現実なんかに引き裂かれたくないよ。
____愛は成就よりも継続が難しい
本当にそうだ。
一緒にいるのが長くなれば、その分いろんな事がある。
好き、愛してる、だけでは続かない。
二人の愛が大事なら、壊したくないのなら努力が必要だ。
ウチ、ジャッキと一緒にいられるなら、なんだってするよ。
「マジョは優しいな、こんな自分を理解しようとしてくれる。自分には勿体ない奥さんだよ。だけどね、」
『ジャッキ!』
言いかけたコトバを遮った。
だって何を言おうとしたのか分かっちゃったんだもの。
「だけどね、」の後は「もう一緒にはいられない」だ。
そんなの言わせないから。
死者と生者はお互い触れ合うコトは出来ない。
それは分かってるけど、それでもウチは、ジャッキの唇に自分の唇を重ねたの。
キスの感触はないけど、それでもすごく近くて、ジャッキの息遣いがわかるようで、ウチからキスするなんてすごく恥ずかしいけど、どんな言葉よりも一回のキスの方が気持ちが伝わる気がしたんだ。
唇を離した時、ウチもジャッキも泣いていた。
泣きながら視つめ合っていた。
大きな手はウチの頬にあてられて、ウチの涙を拭おうとしてくれてるんだって分かったら、よけいに涙が溢れてしまって、好き、大好きって気持ちが込み上げるの。
「マジョの髪……星の色がローズピンクだ。アナタは今でも自分を愛してくれるの? こんなに優しいマジョを裏切ったのに、アナタ以外の女も愛してしまったのに、」
ジャッキ、すごく泣いてる。
こんなに泣いてるのを視るのは初めてで、拭ってあげたくて、ジャッキの目に、頬に、何度も何度もキスをした。
泣き止んでくれたらいいのに、ジャッキ、笑ってくれたらいいのに。
『キライになんかなれないよ。初めて抱きしめられた時から、ずっとジャッキが好きなんだもの。ねぇ、ジャッキ。ウチも悪かったんだよ。ジャッキが現世で辛い思いしてるの、気付いてあげられなくてごめんね。ウチばっかり甘えててごめんね。ウチ、もっとジャッキの気持ちが知りたいよ。弱い部分も知りたいよ』
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