第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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『ジャッキ、今なにを考えてる? ウチともう逢わないってまだ思ってる? イヤだよ、別れない。だってジャッキはウチを嫌いになったんじゃないでしょう? 好きなんでしょう?』 別れたくない、それはもちろんだけど、ウチがジャッキに縋る理由はそれだけじゃない。 さっき白雪ちゃんから聞いたもの。 ジャッキはウチと大倉の前から姿を消そうとしてる。 二人の女を好きになって、ウチを大倉を傷付けたと責任を感じてる。 「……ああ、好きだよ。マジョが好きで好きでたまらない」 『だったら!』 「だめだよ。だって自分は……」 『……大倉のコトも好き、なんだよね?』 「……そうだ」 知ってるけど聞けば辛い。 だけどウチは逃げたくないよ。 ジャッキを止めたいよ。 『……でもさ、ジャッキ前に言ったよ。大倉と付き合うつもりはないって』 「ああ、」 『抱き合った事もないって、』 「ああ」 『もう逢うつもりもないって、』 「ああ」 『だったら今まで通りで良いじゃない。ウチと夫婦でいようよ。それとも……ウチより、大倉の方が好きなの?』 「……マジョ、ごめんな。そうじゃないんだ。自分はね、マジョと弥生、黄泉と現世。二つの世界でそれぞれ出逢って救ってもらったの。辛くて、独りではどうにも出来ない苦しみから引き上げてもらったんだ。二人がいなければ自分はどんどん落ちただろうし、やがて腐って絶望し、自ら命を絶っていた、……下手すれば自分が悪霊になっていたかもしれないよ」 ジャッキが悪霊に……? 昨日視たアイツらみたいになってしまうと言うの? ジャッキは悪霊になんかならないよ。 考え方は極端だけど、嫌になるほど頑固だけど、だけどやっぱり優しい人だもの。
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