第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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~~疲れてる時ほど眠れない・弥生視点~~ ____下から視上げてるから余計じゃないか?  ____悪いな、ジャッキー。アタシは着る服を間違えた、 ____スカート履いてTバックをつけてくるべきだった、 ____その方がやる気が出るだろ? ____妹のTバックはいただけない。興奮より冷えないか心配になる、 夢を見ていた。 ジャッキーと戦闘訓練をしていた頃の夢だ。 初めて依代フィギュアに憑依して戦った夜。 訓練だっつのに、くだらないコトばっかり話してたな。 でも楽しかった。 思いっきり身体を動かして、家に帰ったらビールを飲んで、酔っぱらってバカな話で死ぬほど笑ったら「おやすみ」って眠るんだ。 あー幸せだったなー。 やけにリアルな夢はアタシを幸せな気持ちにさせ、そして深い眠りから引き上げた。 枕元のスマホを見ればまだ九時前で、布団に入って二時間くらいしかたってない。 「睡眠、足りてないはずなんだけどな」 誰に聞かすでもないけど、なんとなく独り言。 昔からそうだ、疲れすぎてると眠れない。 横になれば深い眠りに落ちるけど、短時間で目が覚めてしまう。 それにしても身体中のアチコチが痛い。 打撲や切り傷、それと地面に叩きつけられた時のダメージが残ってる。 だけどダイジョブ、あと数時間もすれば治るはずだ。 ヤヨちゃんが一緒にいるようになってから、アタシの怪我の治りは異様に早い。 怪我だけじゃない、風邪をひいてもすぐ治る。 どんなに飲んでも二日酔いもない。 ヤヨちゃんはなにもしてないよって言うけど、絶対あの子がなにかしてる。 もう、大好き。 アタシは布団の中でグダグダしながら、部屋の中を眺めていた。 昔のまんまだ。 ジャッキー、ココ片付けなかったんだな。 訓練中、急遽作ってくれたアタシの部屋。 アタシ用の布団と、アイツのおさがりのテーブル。 クッションとか棚とか鏡とかは、あの頃ジャッキーが買ってくれた。 三カ月も住むんだから、足りない物があれば言ってくれって。 訓練が終わってこの家を出たのに。 まさか、五年もそのまま残してくれてたなんて。 もしかしたら忙しくて片付けるヒマがなかっただけかもしれないけど、それでも嬉しかった。 ココにまだアタシの居場所があるのが、泣きそうなほど嬉しかったんだ。 くっそー。 また”好き”が増えちゃったじゃんか。 ジャッキーが好きでたまらない。 今日が最後で二度と逢えなくなるけど一生好きだ。 イコール、アタシの生涯独身も決定。 ま、いいけどさ。 ラッキーなコトに今の時代、一生独身なんて珍しくもなんともない。 結婚しろってせっつく家族もいない。 お気楽なもんだ。 それにアタシにはヤヨちゃんがいる。 ダイジョウブ、淋しくないよ。 あー、あと仕事どーしよっかなー。 ジャッキーの前から姿を消す、その決心は変わらない。 だとすると仕事をどうするかだよなぁ。 ジャッキーは基本在宅勤務だ、現場に直接向かうアタシと顔を合わせるコトはまずない。 たまの出社日は、誠に頼んでアイツと重ならないよう調整してもらえば……辞めなくてもイケルかな。 今更、霊媒師以外の仕事を一から覚えるのもダルイ。 かといって霊媒師を社員で雇う会社なんて、”おくりび”以外に聞いた事が無い。 そうなるとあとは、島根の霊媒一族のトコで雇ってもらうかだけど、先代が言ってたんだよね。 瀬山の屋敷のまわりには飲み屋がないって。 そんなトコ、行きたくないわ。
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