第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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とりあえず引っ越しはしよう。 ジャッキーの家とアタシのアパート、近所すぎるもの、絶対会っちゃうもの。 スーパーとかコンビニとかホムセンとか、余裕で遭遇しちゃいそう。 下手すりゃ週3くらいで逢っちゃいそう。 大体さ、初めて出逢った場所も近所だった。 あの廃ビルはジャッキーの家とアタシのアパートの中間地点にある。 駅からの帰り道、アタシはいつもあの廃ビルの前を通るんだ。 初めて逢ったあの夜、ジャッキーは悪霊達からアタシを守る為に防御陣を展開させたんだよな。 必死な顔で「逃げろ!」なんて言っちゃってさ。 きゃーーーー! 思い出しただけでトキメク! アイツって特別カッコイイって感じじゃないのに、ぱっと見普通の男なのに、強烈な磁力があるんだよなぁ。 あの磁力で「逃げろ!」って守られたら、そら惚れるわ。 そう、不可抗力だ。 一目惚れに近かった。 だからジャッキーを強引に飲み誘って、その時いた悪霊四体が邪魔で瞬殺したんだ。 今思えば瞬殺しといて良かった。 アイツが廃ビルに行った理由、それはあわよくば悪霊達に殺されようとしたからだ……マジョリカに逢いたくて、黄泉の国に逝きたい一心でさ。 あのまま悪霊達を野放しにしていたら、きっと別の日にまた廃ビルに行ったに決まってる。 無茶するなっての、まったく。 無茶と言えば今回の悪霊取り込みもそうだよな。 霊媒師が自分の身体を依代代わりに霊を取り込む、確かにそういう術はあるけどさ、それは善霊を一体のみ取り込むのが前提だ。 悪霊を取り込むなんて聞いた事がない。 あまりにも危険だ。 しかもあの野郎、十体も取り込みやがった。 いくら悪霊を霊力(パワー)サーバーの代わりにしたかったとは言え、無茶しすぎ。 あんなコト普通は怖くて出来ない、下手すりゃ死ぬもの。 家の中には取り込みそこねた悪霊達がウジャウジャいたし、そもそもアイツはボコられて風呂の中に沈んでた。 アタシらが助けに行ったから良かったんだ。 そうでなかったら死んでたかもしれないよ。
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