第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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ドキドキしながらジャッキーが話してくれるのを待っていた。 二人の間でアタシの話題が出るって、なんだかちょっと落ち着かない。 「その話をする前に……弥生。マジョをずっと守ってくれてありがとう。マジョがね、弥生にすごく感謝してるんだ。直接会ったらマジョからも言われると思うけど、特に【闇の道】で助けてくれた事、感謝してもしきれないって。弥生がいなかったらマジョは地獄に流されていた。弥生、ありがとな。気持ちに迷いがあったら、守り切れなかったと思う」 さっきまで笑ってたジャッキーは、急に真面目な顔で頭を下げた。 や、やめてくれよ! 「ちょっと! そんな大袈裟なモンじゃないよ! あの状況で助けるのは当たり前だろう? 改めて言う程のコトじゃないさ」 「……おまえ、マジョにずっとそういう態度だったらしいな」 呆れてる、とはちがうけど、コイツのジト目にめちゃくちゃビビる。 「え!? なに!? アタシなんか嫌な態度取ってたのか!? だとしたらごめん!!」 アタシにしては珍しく気を遣ったつもりだったけど、知らないウチにイヤな態度を取ってたのかな!? どーしよ! 謝らなくちゃ! 「いや、違くて。マジョを守って悪霊滅しても、なーんにも言ってこなかったって。滅してやったんだとか、恩着せがましい事一切言わなかったんだろ?」 「なんだそんなコトか……あーびっくりした。つーか、そんなんワザワザ言うかよ。カッコ悪い。強い方が弱い方守るのは当たり前だろ」 ジャッキーだって同じじゃないか。 ずっとアタシはアンタに守られてきたんだよ。 「はぁぁ……そういう態度取るからだぁ。マジョは弥生の話ばっかりだよ。紫の刀で戦ってた! って、へっぴり腰で一生懸命マネして自分に説明するんだ。それがおかしくてさぁ。一度笑ったらヘソ曲げて口聞いてくれないの。ま、三十分もしたら、頼んでもないのにまた説明を始めるんだけど」 心底困った顔で肩をすくめる48才に少々の同情。 そんなコトよりアタシは、へっぴり腰のマジョリカが『てやー』とでも言いながら、エア刀を振っている所を想像してしまい、おかしくてたまらなった。 「……ぶはっ! マジで?」 「はぁ……笑ってないで責任取ってくれよ。あの美貌で怪しい儀式みたいな動きをするんだ。ちゃんと視ないと怒る、笑えば怒る。やっと一通り終わったかと思えば、また最初から説明だ」 「あははははははは! ジャッキーも大変だなぁ! ま、アタシは視てみたいけどな! だってアタシのモノマネだろ? すっげー興味湧くわ!」 マジで視てみたい! あの神がかった美少女が(実年齢、生きてりゃ40だけど)、アタシのマネしてエア刀振るとかスゴくない? しかも儀式ライクな動きでさ。 ヤバイわ、それ絶対ヤバイわ。 ごめんマジョリカ。 アタシはそんなアンタがめちゃくちゃ視たい! 視たいっていったら、視たいんだよぉーーーーーーっ! 「マジョは『大倉が、大倉が』って大騒ぎだよ。まったく……弥生には責任を取ってもらわないとな」 「責任ってどうやって? 刀の稽古をつけるのか? へっぴり腰にならないように? いいよ! そのかわりマジョリカの立ち振る舞いはヤンキー仕様になるかもな、あはは」 せっかくだから、とことんヤンキーにさせちゃうか。 『おまえドコ中だ(訳:どちらの中学校ご出身ですか?)こらぁ!』とか言わせてさ。 ま、そんなマジョリカでもコイツは鼻の下を伸ばしそうだけど。 変な想像を膨らませ、アタシとジャッキーは顔を見合わせて笑ってしまった。 マジョリカの話でこうして二人で笑い合えるなんて、昔なら絶対あり得なかったのに。 なんか、こういうのっていいな。
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