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友情か愛情か。
それがハッキリしたのは、こないだの弥生さんとジャッキーさんが結婚したと聞いた日の夜だった。
会社で聞いてすぐはさ、良かったねって、幸せになってねって思ったんだ。
いや、今だって幸せになってほしいと思っているけど。
ただ……その日の夜。
寝る前に、ふと考えてしまったんだ。
ああ、そうか、唐揚げも、シチューも、キッシュも、パンも、弥生さんの為に僕が作る必要はないんだなぁって。
きっとそういうのはジャッキーさんが作ってくれる。
僕よりも料理が上手だし、弥生さんもジャッキーさんが作ってくれた方が喜ぶんだろうなぁって。
そう思ったら、なんだか泣けてきちゃったんだよね。
それで、やっと分かったんだ。
僕は弥生さんが好きだったんだなぁって。
一緒にいれば楽しくて、話せば話題は尽きなくて、いつまでだって話していられる。
僕が辛く苦しい時は、優しく癒して引き上げてくれた。
ああ、それと、百体以上の悪霊の群れに、二人だけで突っ込んでいったんだ。
信じられない……僕がだよ?
生まれてこのかた喧嘩なんて一度もしたコトがなかったのに、超平和主義なのに、弥生さんを一人で行かせる訳にはいかないと、自分から喧嘩をしに行ったんだ。
怖かったけど、痛かったけど、弥生さんが途中何度も「エイミーちゃん、カッコイイ!」って、僕を褒めてくれて、それだけでなにも怖くなくなって、もっと頑張ろうって思ってさ。
弥生さんと一緒なら、僕はなんでも出来るんじゃないかって……そう勘違いさせてくれるんだ。
参ったなって思ったよ。
もっと早く気付いていればって……ああ、違うか。
気付いたところで、弥生さんに「好きです」と言ったところで、振られたに決まってる。
だって弥生さんは、今も昔も未来も、ジャッキーさんしか好きじゃないんだもの。
だから、これで良かったんだろうな。
好きだとかそういうコトを言わなければ、これから先も友人として付き合っていける……いける……いけるけどさ。
でもやっぱり、つ、辛い……!
大和さんのお料理チャンネルで、一人盛り上がったというのに、料理繋がりで弥生さんを思い出して落ち込むという……あーもーイヤー。
てか、弥生さんて、こーゆー辛さを(や、僕よりもっと辛かっただろうけど)七年も抱えてきたってコトでしょ?
もうなんかスゴイな、よく耐えてきたな、やっぱりあの人痩せ我慢させたら日本一だわ。
だ、大福……早く帰ってきて。
大福をモフモフしたら、大福の可愛い鳴き声を聞いたら、僕は一瞬で元気になれるのに。
もうかれこれ二カ月近くも離れ離れだ。
黄泉の国ってそんなに楽しいところなのかな……?
もしかして僕のコトなんて忘れちゃったのかな……?
もう帰ってこないのかな……?
ポチッ!(ネガティブスィッチオーン!)
「うわぁぁぁん、大福ぅ! 大福に会いたいよー! モフモフして頭頂部にぶっちゅーってしたいー!」
うなぁん、
「そう! こんな可愛い鳴き声なの! 大福ぅ! 帰ってきてー!」
うな?
うなぁん!
「……ん? 幻聴?」
ドンッ!
ゴッチン!
座る僕の尻のあたりに柔らかな衝撃を感じた。
同時、
スンスンスンスンスン
ゴロゴロゴロゴゴロゴロ……
激しく嗅がれる鼻息と、ハーレーダビットソンを思わせるゴロゴロ音。
ま……まさか!
ガバッと振り返る、と、そこには……!
「大福ーーーっ!! それに先代もーーーっ!!」
いつのまに部屋に来たのか。
僕の大好きな一匹と一人が、確かにそこに座っていたのだ。
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