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『ごめんねぇ、水渦ちゃんの好きな人のコトは言えないの。それより三男の片想いはどうなの? 吹っ切れそうかな? それとも時間がかかるかな? 弥生ちゃん、結婚しちゃったからねぇ。あんなに美人で優しい子は他にいない。好きになっちゃう気持ちはわかるよ、うんうん』
秘儀! 合掌返し!
先代は”ゴメンねえ”と僕に向かって手を合わせる、それは良いんだ。
そんなコトより……!
「えっと……ん? 今、なんとおっしゃいました? 片想いがどーのーとか、弥生さんがどーのーとか、ははは、聞き違いかな? かな? てか三男って誰のコト?」
えっと……長男がジャッキーさんでしょう? 次男が社長でしょう? キーマンさんは僕より年下、まだ会った事のない先輩霊媒師の方もたぶん年下。
てコトは……三男ってやっぱり僕ぅ?
『カワイイ三男は岡村君にきまってるでしょ。ああ、若いっていいねぇ、甘酸っぱいねぇ。大丈夫ですよ、若い頃の失恋は年を取ったら宝物になりますから。とはいえ今は辛いでしょう。幸い、岡村君は死者に干渉出来るんです。私の胸で良ければ貸しますよ? 思いっきり泣けばいいんです』
さぁ! と両手を広げ、キラキラした目で僕を視る先代。
ちょ、優しい、ちょ、泣きそう。
てか先代の洞察力マジパネェ、って……あれ?
や、待って。
コレ本当に洞察力か?
だって僕が弥生さんを好きになっちゃったのって、先代と大福が黄泉の国に逝った後のお話よ?
不在中の淡い恋、先代が帰ってきたのはつい最近。
なのになんで知ってるの?
その疑問をぶつけてみると、
『ああん、それはね。さっき岡村君の家に到着した時、話しかけようと思ったんだけど、なんか一人でブツブツ言いながら悶絶したり、落ち込んだりしてたから話しかけられなかったの。落ち着くまで待ちましょうって、大福ちゃんと待機してたんだけど、その時ね「僕は弥生さんのコトが好きだったんだー」って聞こえちゃってねぇ。勝手に聞くつもりは……少しだけあったかな、』
テヘっと小首を傾げる先代と大福。
そ、そういうコトかい、なるほどですねー。
ぜぇんぶ聞かれてたってコトなのかー!
アイター! 恥ずかしー!
てか、早目に声かけてよーん!
「先代! コレぜぇったい誰にも言わないでくださいよ? 特に社長! あの人にバレたら大変なコトになる……大騒ぎになって、お祭り騒ぎになってしまう……あぅぅ……ガクガクブルブル……! むしろ弥生さん本人にバレた方が、よっぽど傷は浅い!」
『大丈夫、安心してください。清水君だけには絶対に言いません。岡村君の言う通り、間違いなくお祭り騒ぎになるでしょう。なんなら駅前で号外配られちゃうかも』
ひぃぃぃぃ!!
やりそう! あのツルッパゲ、号外作って配りそう!
「先代ぃぃぃ! 約束! 絶対に約束してください! あのツルツルだけにはぁぁ……あのピカピカだけにはぁぁ……知られたくないぃ!」
想像だけでトラウマになりそうだ。
僕も”黒の電塊”を使わなくちゃいけなくなるかもしれない(もちろん使用上の注意を守り正しく使います)。
『岡村君、今は辛いだろうけど、でもね、恋って素晴らしいですよ。たとえそれが失恋に終わっても、誰かを好きになるというのはステキなコトです。それに……私達霊媒師にとって、失恋を含むココロの痛みというものは、霊力に大きな影響を及ぼします。辛い想いをした分だけ、霊力は大きくなるのですから、』
「……そうなんですか?」
『そうよ、まだ聞いた事はなかったかな? それならちょうどいい。今夜は岡村君のオウチにお泊りです。夜は長い、心の痛みと霊力について教えてあげましょう』
先代はそう言って、優しい顔で笑ってくれた。
ココロの痛みと霊力、それはどう影響を与え合うのだろう?
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