第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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「どうぞ、めしあがれ」 ほどよく冷えたスィートポテト。 お皿ごとひんやりで、先代のテンションも上々だ。 大福は猫又だけど、砂糖やバターが入っているスィートポテトは、念のためあげない事にした。 生猫なら絶対に食べさせちゃイケナイものだもん。 なので、かわりに茹でたささみをほぐしたモノをお皿に出してあげる。 大福先生は『うみゃうみゃ』言いながら、ちっちゃなお口をモゴモゴさせているんだけど…… キャー! サイコー! 世界一カワイイ! 世界の頂点って東京都F市に(僕のアパート)あったんだな! 『んまーい! 弥生ちゃんの芋饅頭と同じくらい美味しいよ!』 「気に入ってもらえたなら良かったです。また作りますからね」 わぁい、なんて喜んでくれた先代は、甘いモノ補充で充電完了。 話の続きが始まった。 『では、落ち着いたところで、と。まず……人は嫌なコトがあった時、ストレスがかかります。よく”ストレス解消”なんて聞きますが、嫌なコトがあっても、思いっきり身体を動かしたり、歌を歌ったり、友達と旅行に行ったり、ペットに癒されたり、うまく消化できれば何の問題もありません。それによって魂に傷がついたり抉られる事もありません』 うんうん、ストレスね、あるある。 仕事や人間関係、健康問題や恋愛絡み、人は生きていればなんらかのストレスに晒されるんだ。 でもま……こればっかりは仕方がないのよね。 ストレスは溜めすぎず、うまく付き合っていくのが理想だ。 だけどたまに、付き合いきれない時がある。 何をしてもストレスを減らす事が出来なくて、どんどん落ち込んで、下手すりゃ体調にまで影響を及ぼすんだ。 そんな時、まわりにいる誰かに助けを求められれば良いんだけど……時にそれも難しい時がある。 なんとも厄介な代物だ。 『問題はそれが出来ない時です。嫌な事、辛い事が重なって、もしくは一つの傷が耐えられない程大きすぎて、解消や癒しが追い付かない時、心の傷は魂にまで傷をつけます。小さな傷から大きな傷、もっと酷くなれば抉られて欠損します』 「欠損……もしそうなったら、どうなっちゃうんですか? どんどん減って寿命が縮むとか……? なんだか怖いな」 『確かに、魂が削られ続ければ命にかかわります。いや、命どころか魂が消滅すれば霊体になる事も出来ず、無になってしまいます。人が持つ魂の容量、これは生まれてから亡くなるまで変わりません。目減りしても魂自体が修復する事はないのです。……が、しかし、その傷付いた箇所を修復してくれるモノが一つだけあるんですよ。たとえるなら……木工品の傷にパテを埋めてなだらかにするようなイメージですね』 パテで埋める……おぉ! そんな感じか。 僕は魂がどんな形でどんな色かはわからないけど、なんどなく木彫りの仏様が頭に浮かび、頬っぺたに出来た傷をパテ埋めしてるイメージが浮かんだ。 先代にそう話すと『大体合ってます』とニッコリ笑う。 そして、こう続けた。 『傷を埋めてくれるパテがあれば、多少の傷でも魂を修復してくれる。人の魂とはうまく出来ています。それなら、魂を修復する”パテ”は何なのか? それは……どんな人の中にも眠っている霊力(ちから)なんです』
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