第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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『わかりました。では、改めて説明しましょう。まずね、』 基礎となる説明はこうだった。 箱の中に眠る霊力(ちから)の量は人それぞれ。 半分くらいしかない人もいれば、蓋のスキマから漏れ溢れるくらい多い人もいるという。 抱えるストレスに対抗できるチカラ。 解放された霊力(ちから)は、必要な能力を創り出し、その人に付与し発動させるのだ。 じゃあ、どんな能力が付与されるのか。 先代はまず、霊力(ちから)の保有量が少ない人の説明からしてくれた。 少ない霊力(しげん)の範囲内で、精一杯造り出された能力の一例だ。 昔からエブリデイ、いつだってツイてない人。 何をやっても空回り。 天気予報で『今日は一日晴天です』と言っていたのに、出かけた先では当然のように雨が降る。 電車に乗ろうと駅まで行けばス〇カがないし、財布と傘は月一ペースで失くしてしまう。 数え上げればキリがない。 一つ一つは小さなコトでも、毎日こうじゃ気持ちが落ちるし、深刻にもなる。 俺が、私が、特別不注意なんじゃないだろうか。 悪いのはぜんぶ自分で、まわりに迷惑ばかり掛けてしまう。 もしかして駄目人間……? 落ち込んで、追い詰まり、度重なって傷付く心は魂をも傷付ける。 いつしか霊力(ちから)による自動修復も間に合わなくなり……蓋が開いた。 その結果得たチカラは、【近い未来の予知能力】。 遠い未来は視えなくとも、一時間先、一日先の未来が視えれば、不運を回避するのは実にたやすい。 「よ、予知能力!? マジですか!? 霊力(ちから)の少ない人でそのレベル!? ……あーっ! てか、そのチカラ使えば大金持ちになれちゃうじゃーん! だってほら、宝くじとか宝くじとか宝くじとかーーーっ!」 僕の動揺に先代は、 『いや、お金持ちにはなれませんよ。なぜなら、そこは制限がかかってます。お金儲けや犯罪など、ワルイ気持ちが混ざった状態では未来を視るコトは出来ません。あくまで不運を回避するだけの能力です』 とおすまし顔だ。 そ、そっか……安心したよ。 予知能力がお金儲けに使えたら超チート。 そんなんだったら、僕のスキルと取り替えてほしいくらいだわ。
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