2367人が本棚に入れています
本棚に追加
『ウチの会社の子達は、みんな霊力をいっぱい持っています。その中でも弥生ちゃんの保有量はダントツで、蓋が開く前から死者の姿を視る事が出来ました。あの子の中で、霊力は閉じた蓋の隙間から漏れ出していたんでしょうなぁ』
溶けたお餅をナデナデしながら先代は話し出した。
そのお餅は、ぷはーと欠伸をひとつして、クルリと霊体を捻るとモフモフのおなかを視せてくれた(カワイー! 顔埋めたーい!)。
で、話は戻る。
やっぱりそうか。
弥生さんって霊力をいっぱい持ってるんだな。
だからこそ、少女時代の弥生さんは悪霊達に苦しんだんだ。
想像しただけで身震いするよ。
突然現れた得体の知れない黒い人型集団。
そんなのに毎日憑きまとわれて、襲われるなんて気が狂いそうになる。
全身黒タイツ野郎共、弥生さんの目にそう映る悪霊達は、悪意を持って憑きまとっていたのだろう。
「ねぇ、先代。弥生さんって死者の姿だけでなく、なんで感情も視えるんでしょう。そういうスキルを持ってるのは弥生さんだけですよね? 社長や水渦さん、もちろん僕にも視えません。あ、ジャッキーさんは視えるか。でもアレは、正確に言うと霊力じゃないからなぁ」
ジャッキーさんの目に映る死者は、頭上に水晶に似た玉が浮いている。
その玉が透き通っていれば善霊だけど、黒ければ悪霊だ。
だけどそれは霊力で視てるんじゃない。
バラカスさんの霊銃で得た、後付けの視力だ。
『おそらく自分を守る為、霊力が進化したのだと思います。少女の頃の弥生ちゃん、人間関係がうまくいってなかったでしょ。家庭にも学校にも居場所がなくて、味方もいなくて傷付いてばかりでした。だからじゃないでしょうか。自分に害を成す者をいち早く見つける為、必要に応じて戦う為、その対応に遅れを取らない為の悪意の可視化ではないかと。さすがに生者の感情は視えないようですが、相手が死者なら視放題です。まぁ、可視化を可能にする程の霊力を持っていたからこその実現ですがね』
「すごいな……それだけの霊力を持っていて、ヤヨちゃんまでいるんだ。もしかして、ウチの会社で一番の手練れって弥生さんですか?」
僕の好きになった女性は、もしやスゴイ人なのでは?
と、ドキドキしながら聞いてみる。
すると先代は、困ったように笑いこう言った。
『んー、そうとも言い切れません。確かに持っている霊力は清水君や水渦ちゃんより上です……が、技術面では水渦ちゃんの方が勝っています。ほら、弥生ちゃんは複雑なコトが嫌いでしょ? あの子は”ウォールの印”以外、印はからきしです。印の長い工程を覚えられないし、覚える気もありません。逆に水渦ちゃんは、どんなに複雑な印でもすぐに覚えてしまいます。霊力に印を組み合わせれば、発動する霊力は二倍にも三倍にもなりますからね』
あー、そうね。
弥生さんって、複雑なコト&難しいコトアレルギーを持ってるんだった。
ま、そういうトコロがまた可愛いんだけど(やだっ! 僕って未練がましい?)。
『その点、トータルでバランスが取れてるのが清水君です。彼は霊力もあるし戦闘能力も高い。印は水渦ちゃんほど結べませんが、弥生ちゃんより多く結べます。対人能力も高く、人当たりも良い。普段あれだけふざけてますが、お客様対応はキチンと出来る。ま、礼儀作法に関しては大和君が厳しかったからね』
そ、そうか……ウチの会社ってフランクすぎて、たまに心配になるけどハイスキルな人材ばかりなんだな。
最初のコメントを投稿しよう!