第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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『ウチの会社の子達は、みんな霊力(ちから)をいっぱい持っています。その中でも弥生ちゃんの保有量はダントツで、蓋が開く前から死者の姿を視る事が出来ました。あの子の中で、霊力(ちから)は閉じた蓋の隙間から漏れ出していたんでしょうなぁ』 溶けたお餅をナデナデしながら先代は話し出した。 そのお餅は、ぷはーと欠伸をひとつして、クルリと霊体(からだ)を捻るとモフモフのおなかを視せてくれた(カワイー! 顔埋めたーい!)。 で、話は戻る。 やっぱりそうか。 弥生さんって霊力(ちから)をいっぱい持ってるんだな。 だからこそ、少女時代の弥生さんは悪霊達に苦しんだんだ。 想像しただけで身震いするよ。 突然現れた得体の知れない黒い人型集団。 そんなのに毎日憑きまとわれて、襲われるなんて気が狂いそうになる。 全身黒タイツ野郎共、弥生さんの目にそう映る悪霊達は、悪意を持って憑きまとっていたのだろう。 「ねぇ、先代。弥生さんって死者の姿だけでなく、なんで感情も視えるんでしょう。そういうスキルを持ってるのは弥生さんだけですよね? 社長や水渦(みうず)さん、もちろん僕にも視えません。あ、ジャッキーさんは視えるか。でもアレは、正確に言うと霊力じゃないからなぁ」 ジャッキーさんの目に映る死者は、頭上に水晶に似た玉が浮いている。 その玉が透き通っていれば善霊だけど、黒ければ悪霊だ。 だけどそれは霊力(ちから)で視てるんじゃない。 バラカスさんの霊銃で得た、後付けの視力だ。 『おそらく自分を守る為、霊力(ちから)が進化したのだと思います。少女の頃の弥生ちゃん、人間関係がうまくいってなかったでしょ。家庭にも学校にも居場所がなくて、味方もいなくて傷付いてばかりでした。だからじゃないでしょうか。自分に害を成す者をいち早く見つける為、必要に応じて戦う為、その対応に遅れを取らない為の悪意の可視化ではないかと。さすがに生者の感情は視えないようですが、相手が死者なら視放題です。まぁ、可視化を可能にする程の霊力(ちから)を持っていたからこその実現ですがね』 「すごいな……それだけの霊力(ちから)を持っていて、ヤヨちゃんまでいるんだ。もしかして、ウチの会社で一番の手練れって弥生さんですか?」 僕の好きになった女性は、もしやスゴイ人なのでは?  と、ドキドキしながら聞いてみる。 すると先代は、困ったように笑いこう言った。 『んー、そうとも言い切れません。確かに持っている霊力(ちから)は清水君や水渦(みうず)ちゃんより上です……が、技術面では水渦(みうず)ちゃんの方が勝っています。ほら、弥生ちゃんは複雑なコトが嫌いでしょ? あの子は”ウォールの印”以外、印はからきしです。印の長い工程を覚えられないし、覚える気もありません。逆に水渦(みうず)ちゃんは、どんなに複雑な印でもすぐに覚えてしまいます。霊力(ちから)に印を組み合わせれば、発動する霊力(ちから)は二倍にも三倍にもなりますからね』 あー、そうね。 弥生さんって、複雑なコト&難しいコトアレルギーを持ってるんだった。 ま、そういうトコロがまた可愛いんだけど(やだっ! 僕って未練がましい?)。 『その点、トータルでバランスが取れてるのが清水君です。彼は霊力(ちから)もあるし戦闘能力も高い。印は水渦(みうず)ちゃんほど結べませんが、弥生ちゃんより多く結べます。対人能力も高く、人当たりも良い。普段あれだけふざけてますが、お客様対応はキチンと出来る。ま、礼儀作法に関しては大和君が厳しかったからね』 そ、そうか……ウチの会社ってフランクすぎて、たまに心配になるけどハイスキルな人材ばかりなんだな。
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