第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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『ふふふ……ウチの子達、みんなスゴイよねぇ。瀬山の霊媒一族にだって負けていないと私は思ってますよ。そのスゴイ子達の中には、もちろん岡村君も含まれています。何度も言いましたが、岡村君の霊力(ちから)は誰よりも強い。清水君や弥生ちゃんよりもね』 「僕が……あの二人よりも、ですか?」 おずおずと尋ねてみる。 なんとも信じがたい。 僕は昔から地味だ。 学生時代は可もなく不可もなく。 勉強も運動も、(ちゅう)(ちゅう)をナチュラルキープ。 何事においても平均点。 これだけは誰にも負けない、というのは、猫に対する情熱だけだ。 そんな僕が、あの社長や弥生さんより霊力(ちから)が強いと言われても、素直に信じる事が出来ない。 『そうです、あの二人よりもです。……ん? なあに? その目は。ぜんぜん信じてないでしょう。キミは私が惚れこんだ子なんです。もっと自信を持ってちょうだい。それで岡村君、”希少の子”というのは聞いた事があるかな?』 なんか聞いた事があるようなないような……記憶を辿るもはっきりとは思い出せない。 「あるかもしれないけど……ゴメンナサイ。意味はよくわかりません」 わかりました、と先代は頷いて、その意味を丁寧に説明してくれた。 『”希少の子”というのはね、百年に一度生まれるかどうか、と言われている、とても霊力(ちから)の強い子の事を言うの。身体の中に霊力(ちから)の入った箱が有り……なんてレベルではありません。”希少の子”は身体そのものが大きな箱なの。その霊力(ちから)は無限に溢れ、どんなに放出しても枯れる事はありません。また、死者を視る目は良すぎる程で、生者となんら変わりなく映します。そして……”希少の子”、最大の強みである特徴は、死者に対し物理干渉が出来る事です。 瀬山の家で希少の子”は、約八十年前に一人だけ生まれました____それが、瀬山彰司さんです』 噛み砕いた説明はわかりやすく、霊媒師でありながら心霊初心者の僕にも理解出来るものだった。 だけど頭は混乱している。 百年に一度? 無限の霊力(ちから)? 良すぎる目は死者を生者のように映す? 実体のない霊体に物理干渉が出来る? 百年かどうかは知らない、霊力(ちから)が無限かも知らない。 でも良すぎる目と物理干渉は、まんま僕のスキルだ。 瀬山一族に生まれた”希少の子”は瀬山さんただ一人。 その瀬山さんと同じスキルを僕も持つと言うのか。 学生時代から地味で目立たない平凡なこの僕が? 「先代……なんで僕なんでしょうか、」 思わず聞いてしまった。 だってそうだろ? 代々続く霊媒一族に”希少の子”が生まれるというのは、なんとなく分かる。 だけどウチは平凡なサラリーマン家庭で、両親共に霊感のレの字もないのだ。 そんな二人からどうして”希少の子”が生まれたんだろう。
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