第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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『なぜ岡村君か、という事ですよね。それは……』 「それは……?」 僕はゴクリと喉を鳴らす。 この平凡黒帯、それがどうして”希少の子”? 『それは……岡村君が今、三十才だからです』 「………………?」 ズズーっと音はしないものの、先代はメロン紅茶を飲んでいるのか、目を閉じ『あ゛ー』と渋い声を漏らした。 で、その後はいくら待っても続きが無い。 え、えぇ? 「あのー、先代? なんで僕が三十才だと”希少の子”になるんですか? ちょっと、なに言ってるかわからないんですけど、」 まさかコレで説明終わりとか言わないよね? 続きはよっ! 『ふふふ……そうだよねぇ。これだけじゃわからないよねぇ。いやね、”希少の子”がどうして生まれるのか。コレ、現世の人間はまだ誰も知らないのよ。今、この瞬間、謎を知ってるのは私だけーっ! なんて……ちょっと優越感で勿体ぶっちゃいました』 テヘっと可愛く小首を傾げ『ゴメンゴメン』と謝る先代は、さり気なくスゴイ事言ってなかった? 「まだ現世で誰も知らないって……それって瀬山一族も?」 『もちろん、瀬山の人間も知りません。なぜ私が知ってるかというと、黄泉の国で瀬山彰司さんから教えてもらったの。黄泉の国(むこう)は技術も情報も現世より進んでますからねぇ。現世(こっち)で謎とされるコトのほとんどは解明済みですよ』 そうなんだ……前にジャッキーさんも言ってたっけ。 黄泉の国はすべてにおいて現世よりも進んでるって。 すごいな……じゃあじゃあ、ナスカの地上絵は誰が描いたとか、古代ミノア人の言語の解読とか、そういうの、もうみんな解っちゃってるの!?(僕はけっこう地球ミステリーが好き) くぅ、いいなぁ! 先代もジャッキーさんも、黄泉の国に逝った事があるなんて羨ましいよ! 『では続きをば。岡村君の年齢のコトは一旦横に置いておき、先に別の説明をします。”希少の子”が生まれる条件。それは、ある惑星の表面で起こる爆発に関係します』 「ある惑星の……爆発? ……惑星ってコトは宇宙の話ですか?」 『そう、宇宙のお話です』 ど、どうしよう……聞いたらますますわからないの第二段だ。 だって宇宙よ? 惑星よ? 爆発よ? それと”希少の子”がどう結びつくのさ。 「先代、ごめんなさい。僕、昔からバリバリの文系なんです。理系な話はホントに苦手で、出来ればめちゃくちゃ噛み砕いて話してもらえるとありがたいんですが……」 そう、僕の理系アレルギーは、弥生さんの”難しい事アレルギー”に匹敵するレベルなのだ。 入社してすぐの座学で、死者の霊体(からだ)は電気信号の集合体で……とか説明が始まった時は、正直ついていけるか心配になったほどだもの。 『わかりました。岡村君の為に目一杯噛み砕きましょう! ……と言ってもそんなに難しい話ではないから安心してちょうだい。なんたって生きてれば八十才のお爺ちゃんと(瀬山さん)七十八才のお爺ちゃん(先代)で理解出来る話なんだから』 先代はシワシワの指を折りながら『二人合わせて158才♪』と嬉しそうに笑っていた。
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