第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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『惑星の爆発といっても、大きく分けて二種類あります。その惑星自体が寿命を迎え、最後に消滅する為の大爆発。それと、まだまだ元気で消滅はしないけど、星の表面で起こる爆発です。”太陽フレア”って聞いた事ある? 太陽もね、表面爆発をしてるのよ。小さなものなら日に三回程度はあるみたいだけど』 囲碁将棋が趣味です、と言われたら「でしょうな!」と答えたくなる典型的なお爺ちゃんなのに、”惑星の爆発”とか”太陽フレア”とか、外見と話す内容がどうにもアンマッチだ。 だけど、太陽がたまに爆発してるっていうのは、なんとなく記憶にあるぞ。 多分テレビかネットで見たんだと思うけど(所詮その程度だ)。 『地球と太陽ってうんと離れてるでしょう? だから太陽フレアが起こっても、地球に影響はほとんど(・・・・)ないの』 「……ほとんど(・・・・)? という事は影響がゼロではないんですね?」 『おっ! さすがは文系。言葉をきちんと拾いますね』 「えへへ、恐縮です」 『岡村君の言った通り、大きな爆発なら影響が出る事もあります。わかりやすいのは電波障害で、宇宙空間にある衛星への影響はもちろん、地球でも昔大規模停電がありました』 「えぇ! 地上に影響が出たの!?」 『でましたよぉ。驚いちゃいますよねぇ。どんなに距離があっても、まさかこんな所まで届かないだろうと思っても、爆発のエネルギーが大きいと、距離など関係なく届いてしまうものなんです。……ここまではいいかな?』 「いーでーすっ♪」 わぁ、なんか学校の授業みたいだ。 瀬山さんも先代に、こんな風に教えてあげてたのかな? 今の僕達は先代が先生で僕が生徒だよ。 ふふ、なんだか楽しい。 『それでは本題です。岡村君、”マザースター”って聞いたコトはある? もしかしたら、弥生ちゃんかジャッキーさんか、それかマジョリカちゃんから聞いたかなぁと思ったんだけど、』 マザースター? ああ、それならこないだ会社で聞いた。 あれは弥生さんとジャッキーさんが出社した日だ。 弥生さんとしばらく会ってなかった一カ月、その間何があったら結婚に至るのか、それを根掘り葉掘り聞いた時に、マザースターの話が出たんだ。 「少しなら聞いてます。木星の十倍くらいの大きな惑星で、黄泉の国を支えている電気の星ですよね? 弥生さんが言ってました。地球にとっての太陽みたいな星なんだって」 『はい、ご名答。黄泉にあるすべての物は電気信号の集合体。死者達の霊体(からだ)も、街も、草木も花も、食べ物も飲み物も、なにもかも。それらを構築するのに必要な電気。それはすべてマザースターからから注がれます。弥生ちゃんの言う通り、地球にとっての太陽のような存在です』 「支えてくれる星、だから“母なる星”と呼ばれてるんだ……」 『そう、マザースターと太陽には共通点があります。地球と黄泉、それぞれ大きな星を丸ごと支え、時に爆発を起こす。太陽フレアとマザースターフレアです。太陽フレアは電波障害という影響を地球に落とします。マザースターフレアは黄泉の国に膨大なエネルギーを与えます……が、影響を与える星は黄泉だけではありません。遠く離れた地球にもです、』 また、メロン紅茶を飲んでいるのだろうか。 先代は喉仏を微かに上下させると、黙ったまま僕を見詰めた。 これは考えてみなさいってコトなのかな? しばらく目が合って、それでもなにも言わない先代の代わりに、僕がかわりに口を開く。 「もしかして……地球に届いたマザースターフレアの影響が”希少の子”を造る、という事でしょうか?」 答えを聞いた先代は、 『はい、ご名答』 そう言ってニッコリと笑ってくれた。
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