第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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そうなのよね。 あの夜の公園は、コミケがアイドルのゲリラライブかってくらい、悪霊が密集してたんだ。 あれじゃあ、矢を外しようがなかった。 てか、今後は少人数と戦う想定で矢の練習しとかなくちゃだな。 『いやぁ、たいしたものですよ。大漁の悪霊で目を瞑っても当たる……と言いますが、その前に霊的なスタミナがなければ無限に撃つ事は出来ません。やっぱり岡村君は”希少の子”なんだねぇ。霊力(ちから)の枯渇を感じなかった? 途中で何も食べられなかったんでしょう?』 「んー、霊力(ちから)を使って空腹にはなりましたけど、特に枯渇は感じなかったですねぇ。てか、いつまでも撃てそうって感じでした」 『あらそう! すごいねぇ! さすが私の岡村君だ! 霊力(ちから)の使い方、キチンと覚えれば相当な手練れになれますよ。……これからビシビシ鍛えちゃおうかしら……戦闘は清水君、武器構築は弥生ちゃん、印は水渦(みうず)ちゃん、霊力(ちから)や技の応用はジャッキーさん、もちろん失せ物探しは鍵君で、私も知っている事は全てを教えるけど……いっそ瀬山さんを口寄せして、”希少の子”から”希少の子”へ直接教えてもらった方が……ブツブツブツ』 「あ、あの、先代?」 いきなり教育ジジ的なテンションになってしまった。 期待してくれるのは嬉しいけど、僕ってばそれに応えられるのかな。 霊的なスタミナは……もしかしてあるかもって思うけど、技術面はどうだろう。 学生時代、成績は(ちゅう)(ちゅう)をナチュラルキープだったし。 暗記物は得意だから印ならどうにかなるかも…… 『岡村君! せっかくの”希少の子”なんだから鍛えましょう!』 わぁお! めっちゃ張り切ってるよ! 「は、はぁ、その、頑張ります」 『うん! 優しくのんびりビシビシいきます! あ、でも誤解しないでね。”希少の子”だからウチの会社の利益になるとか、そういう意味で鍛えるんじゃ……まぁ、正直利益にはなりますけども、それだけじゃない。霊力(ちから)のコントロールを覚えてもらいたいの。岡村君、言ってたでしょ。いつまでも撃てそうだったって。それだけの霊力(ちから)あるってコトは……油断してると、いつかその霊力(ちから)に呑まれてしまう。そうならないように修行させたいの』 あ……そう言えばヤヨちゃんも言ってたな。 ____きをつけて ちから つヨスぎ まちがえルと のまれる って。 少し怖いな。 先代……もしかして、僕を怖がらせないように修行の話に持っていきたかったのかな? さっきまで瀬山一族の話をしたのに、取って付けたように話題を変えたもの。 霊力(ちから)のコントロールが出来なければ呑まれる……それがどういう事なのか、僕にはわからないけど、ヤヨちゃんも先代も同じ事を言うんだ。 それならただ信じてついていくしかないだろう。 「僕を心配してくれるんですよね。ありがとうございます。正直、呑まれるとかそういうのよくわからないけど先代を信じます。それに講師陣もスゴイ人ばかりだ。僕ってすごく贅沢させてもらってる。頑張ります。だから是非鍛えてください!」 『よく言いました! 一緒に頑張ろうね! でも……ふふ、頑張るのは明日から。明日出来る事は今日しない、これが大事なの。で、今夜は楽しくおしゃべりです。さ、おまけもあったけど、”希少の子”の誕生の謎はこれでわかったかな? 良ければ次のお話に進みましょう』
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