第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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____頑張るのは明日から、 そう言ってスィートポテトを堪能する先代はニコニコと笑っていた。 先代っていつも笑ってる。 怒るのは社長が悪ふざけをした時くらいだ。 やっぱりさ、人って悲しい顔や不機嫌な顔よりも、笑ってる顔の方が良いよね。 誰かの笑顔は誰かを少し幸せにするんだ。 「はーい! 明日から頑張りまーす♪」 テーブルを挟んだ至近距離だというのに、プリティスマイルに癒された僕は、先代に向かってブンブンと両手をふってみる。 すると、 ズキューーーーーン! 先代も『岡村くーん♪』なんて言いながら、僕に向かって両手を振り返してくれるじゃないっ! ああ、もうだめだ。 僕はこのまま先代と同居がしたいです! 『じゃあ続き話しちゃおうかな。”希少の子”のお話は次で最後ね。 マザースターの霊力(ちから)を得た”希少の子”は、他の人が持っている”霊力(ちから)の箱”がないって言ったでしょう? その箱が作られる前に、身体の中は霊力(ちから)で満たされるからなの。”希少の子”は体そのものが箱と言っても良い、と言ったのはそれが理由です』 「なるほどですね」 『”希少の子”でない一般の人達なら……強いストレスに晒された時、箱の蓋が開き、嫌なコトに対抗できるチカラを付与してくれます。じゃあ、箱を持たない”希少の子”はストレスに晒された時、どうすると思いますか?』 あ、またクイズだ。 よーし、今度は当てに行くぞー! とは言っても……そうだよな、箱がないってコトは隠し玉がないってコトだ。 そういう時どうするんだろう? 『ふふふ……難しい? わからない? 泣いちゃう? じゃあねぇ、特別にヒントをあげましょう!』 「あれ? 今回はすぐに教えてくれるんじゃないんですか?」 『教えてあげてもいいけど、毎回じゃあねぇ。だからヒントです。岡村君は真珠って知ってる?』 答えがわからない僕に嬉しそうな先代が、答えの代わりにヒントをくれた。 けど、真珠? ……って、宝石の? そりゃあ名前くらいは知ってるし、冠婚葬祭で母親がタンスの奥から真珠のネックレスを引っ張り出してたのを覚えてる。 白くて丸くてツヤツヤしてるヤツだよね? 「真珠って宝石ですか? 僕の知識じゃそのくらいしかわからないけど」 『そう、宝石です。宝石と言っても、ダイヤモンドやルビーサファイヤとは少し違います。ダイヤは鉱物ですが真珠は有機物なんです』 ……? なにが違うかよくわからない。 けど、同じ宝石でも種類は違うっぽいぞ。 『このヒント、男性には難しいかな? 宝石やアクセサリーに馴染みのある女性なら、もしかして……って気付くかもしれませんが』 ははーん。 これ、アレだ。 男の僕にこのヒントじゃ、解答に辿り着けなそうだから出したんだな? その証拠に、 『うふふーっ! 悩んでる悩んでる!』 とまあ、めちゃくちゃ楽しそうだもの。
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