第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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『スマホを使うのはズルですよっ!』 ブーイングの先代を「まぁまぁ」となだめ、詳しい解説をお願いする。 『真珠がどうやって生まれるか、それは岡村君の調べた通りです。貝の中の異物、それから身体を守る為に異物自体を薄い膜で幾重にも包む。”希少の子”も同じ。受けた心の傷を霊力(ちから)でもって幾重にも包むんです。その人自身を守る為にね』 「すごいですね……それなら心が傷付いてもすぐに立ち直れるってコトだ」 『んーそれは少し違います。”希少の子”の霊力(ちから)は、心の傷を”保護”するコトは出来ますが、”修復”は出来ません。受けた傷は、やはり傷なのです。無かった事には出来ない……けども、それで終わらないのが”希少の子”です』 「……と、言いますと?」 『心に受けた傷を核に、霊力(ちから)の層が積み重なって出来た珠は、ぎゅっと圧縮された霊力(ちから)の塊になるの』 「霊力(ちから)の塊、ですか……それは具体的にどういうモノなんですか?」 自前の霊力(ちから)で出来た塊だ。 それが身体の中にあると、”希少の子”にどんな影響を与えるんだろう。 『そうねぇ、簡単に言うと霊力(ちから)を増強させるモノです。もしかしたら……岡村君が弥生ちゃんと、悪霊百体と戦った時の驚異的な霊的スタミナは、霊力(ちから)の塊の効果だったのかもしれませんねぇ』 「えぇ!? 僕の中にすでに塊があったってコトなんでしょうか? ……ああ、でもな……あの時なんであんなに霊矢が撃てるのかなって、自分でも不思議に思ったんです。悪霊百体を拘束した時だってそうだ。あれだけ長い時間拘束したってのに、肩が凝るなと思ったくらいで、霊力(ちから)の枯渇は感じなかった。前回、神奈川の現場で24体の拘束をした時は、もっともっとしんどかったのに……」 『やっぱり塊が出来てたのかもしれませんねぇ。岡村君、ここ最近、何か辛い事や悲しい事はなかった?』 悲しい事や辛い事……そうだなぁ、 「先代と大福の不在は淋しかったです、あとは……これと言って……ん……強いて言えば……いや、でもなぁ、違うかなぁ」 『なに? 間違っててもいいから言ってみて?』 「いや、……その、先月は弥生さんと一緒にいる事が多かったんだけど、ジャッキーさんに片想いしてた頃の辛い話を聞いたり、現世に着いたばかりのマジョリカさんが大泣きしちゃったのを視たりして……こう、心臓がキュゥゥゥッて。弥生さんもマジョリカさんもかわいそうで、どうにかしてあげたいのに、僕はなんの役にも立てないのが辛くて切なくて……」 『そうですか……岡村君はあの子達を視て、そんな気持ちになってしまったんだねぇ。……もしかしたらそれ(・・)が塊を作ったのかもしれません。……まぁ、身体の中を覗く事は出来ないから、あくまでそうであろう(・・・・・・)としか言えませんがねぇ』
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