第十七章 霊媒師 持丸平蔵

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「もー、大丈夫ですよ。元気出してくださいって。瀬山さんはそんなコト気にしてないはずです。むしろ腫れ物扱いだった瀬山さんは、先代が普通に接してくれて嬉しかったんじゃないかな? 僕が瀬山さんの立場ならその方が良いもの」 本当にそう思うよ。 ある日を境に跡取りから一般兵になってさ、さらに心中の事もあるから、まわりからヒソヒソされてたはずだもの。 同室になった霊媒師達から煙たがれ、年中部屋割り変えられて、行き場がなくて辛い中、先代は自ら同室を希望してくれたんだ。 僕なら惚れるね。 『そうだといいんですがねぇ、』 「そうですよ。八つ当たりもそう。そんなん出来るほど仲が良かったってコトです」 瀬山さんにお会いしたコトはないけど、先代のお話を聞いてて思ったんだ。 優しくて穏やかで、辛い思いをした分、簡単に誰かを責めたりしない人なんじゃないかな?  なんて……僕の勝手な想像だけど。 『仲が良かったか……瀬山さん、あんまり話す人じゃなかったけど、十年も一緒の部屋で、私が喋ってるコトのが多かったけど、それでもやっぱり楽しかった』 「そっか。先代が楽しかったってコトは、瀬山さんも楽しかったはずですよ」 『ふふ……そうかな? そうだといいですねぇ、ありがとう。なんだか岡村君は雰囲気が瀬山さんに似ています。なんででしょう、同じ”希少の子”だからですかねぇ。そうそう、私ね、瀬山さんにも岡村君のコトを話したんです。今、私の傍にもう一人の”希少の子”がいるんですよって。その子は駆け出しの霊媒師で、一生懸命頑張ってるんですって。……いつか、いつか瀬山さんを岡村君やウチの子達に会わせてあげたいなぁ』 そんな楽しい未来を思い浮かべる先代は『うふふ、』なんて楽しそうに笑う。 「僕も会ってみたいです。霊力(ちから)のコト、”希少の子”のコト、いっぱい教えてほしいコトがあるけど、先代が若かった頃の話も聞きたいな」 そう、先代が尖っていた頃の話を聞かせてほしい! 『近いうちに機会を設けましょうかねぇ。岡村君の修行もあるし。一般的な技術はウチの子達で充分だけど、霊力(ちから)のコントロールは同じ”希少の子”に教えてもらった方が良い』 「ぜひっ!」 思わず拳を握り力強く答えた僕に、先代は楽しそうにコロコロと笑っていた。
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