第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「おっ! なんだよ、もうオマエラ会ったのか!」 満面の笑みでニギニギニギニギ。 とりあえず、コレに突っ込むと話が長引きそうなのでスルーしてこう答えた。 「会ったと言うより、朝、外でお見かけしたんです。会社に入っていったから関係者かなって」 「ああ、そういうコトか。ま、あと少ししたら降りてくると思うから、そしたらユリも会った事ねぇし、一緒に紹介するよ」 聞けば、我が社の男子更衣室を使う唯一の方らしく、出社した時はまず更衣室に立ち寄り、始業時間ギリギリになって事務所に降りてくるらしい。 「野郎が身だしなみもねぇだろ」と社長は言うが、いやいや、そういうの今は関係ないですよ。 男性だろうが女性だろうが身だしなみに気を遣うのは良い事です。 ……って、今何時だろ? 壁の時計を見れば8時28分。 オレンジさんは(お名前がわからないので仮で勝手につけた)まだ事務所に来ない。 本当にギリギリまで来ない人なんだな。 それからもう1分が経過。 いつ始業のチャイムが鳴ってもおかしくないぞ、と思っていた背後でドアの開く音がした。 ガチャ、 「ざいまーす」 まただっ、ご挨拶のスリム化っ。 「おはようご(・・・・・)ざいます」の上五桁をカットしてるっ! そんなカット職人のオレンジさんは、脱力した無表情、挨拶はするもののそれ以上は話さないし、社長やユリちゃん、僕とも目を合わせない。 ただし白い猫又はチラリと視た。 彼も霊媒師、きっと生きてる猫ではないと分かったはずだ。 それでも無反応、「なんで幽霊猫がいるの!? このビル結界張ってあるよねぇ!?」とか、そーゆーの一切無し。 てか、その前にオレンジさんの知らない顔が二人もいるのに(僕とユリちゃん)そこにもまったく絡んでこない。 オレンジさんは、たくさん並ぶデスクの中から壁際の一台に座った。 あそこが彼の自席なのだろう。 事務所内は社員全員、一人一台ずつのデスクがあり、それぞれ自由に使っていい事になっている。 机上を見れば、誰がどのデスクかすぐ分かるくらいの自由っぷりだ。 たとえばキーマンさんのデスクには、可愛らしい雑貨がたくさん飾ってあるし(飾りすぎで作業スペースほとんど無し)、ジャッキーさんのデスクの上はジャッキー・〇ェンさんのフィギュア(現場用でない観賞用)にヌンチャク、さらにはこないだ出社した時に飾ったのだろうか? 弥生さんの写真と(家でも一緒なのに)マジョリカさんの似顔絵が(本物の写真みたいなクオリティ、描いたのジャッキーさんか?)飾ってある。 その隣の弥生さんのデスクには……えぇ? ちょ、オイ、似た者夫婦だな。 ジャッキーさんの写真とマジョリカさんの似顔絵、それとお酒のビンが乱雑に置いてあった(いいのか?)。 そして水渦(みうず)さんのデスクの上は……や……ちょ……なにコレ。 置いてあるのは一冊の黒いノート、表紙には赤い文字で『殺ノート』と書いてある(おや? どこかで聞いたような……)。 物騒なノートだな。 あの中、何が書いてあるんだろ……? てか、もしアレが某有名マンガと似たようなノートだとしたら……弥生さんの名前が確実に書いてあると思う、あと社長も。 ちなみに僕のデスクは、各種猫ガチャコンプリートが横一列に並び、(ry
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