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とまぁ、みんなのデスクはこんな調子だというのに、オレンジさんのデスクはなんにもない。
ファイルもなければ書きかけの書類もないし、ペン立てすらない。
あるのは支給されたノートパソコンだけだ。
きれいさっぱりすぎて、今の今まで誰も使っていないと思っていたくらいだもん。
その何もないデスクでオレンジさんは、小さな肩掛けカバンからスマホを取り出すと、なにやらポチポチし始めた。
な、なにしてるんだろう?
始業時間はすぎてるのに、社内メールのチェックとか、報告書とか交通費精算とか、そういうのをしてる気配はない。
てか、たぶんゲームしてる。
音はちっさいけどさ、独特なピコピコ音と、バトルシーンを盛り上げる音楽が聞こえるもの。
えぇ……?
基本、この会社は現場でしっかりさえすれば、あとはそうウルサイコトは言われない……けどさ、それにしたって自由すぎないかぁ?
もう、意味がわからないよ……ハッ!
もしかして、これがジェネレーションギャップというヤツなんだろうか?
などと、僕がモンモンとしている背後から、社長のバカデカイ声がオレンジさんに向けられた(てか、同じ事務所内なんだから大声じゃなくても、)。
「おい、嵐! 最近新しく社員が二人入ったんだ! 紹介するからコッチ来いよ!」
オレンジさんって、ランさんっていうんだ……名前だよな、苗字じゃなさそうだけど。
呼ばれたランさんは、スマホの画面から顔を上げた。
ゲームを中断されたであろう顔は……やっぱり無表情。
怒った様子もなければイラついた様子もない、もっと言えばバツの悪い顔もしていない。
ランさんはただ無言のまま立ち上がり、こちらへとやってきた。
「………………」
わお……こんなんでも一応我が社のトップ相手に無言ですよ。
「嵐、紹介するよ」
なにも喋らないランさんを気にする様子もない社長は、僕とユリちゃんを隣に立たせ、こう続けた。
「二人共入社したのは二カ月前。こっちが霊媒師で入った岡村英海。戸籍上の名前は岡村だが、今は”エイミー”だ。嵐もエイミーと呼んでやれ。入社のきっかけはジジィのスカウト、えらい惚れこみようでな。エイミーはウチの会社の誰よりも霊力を持っている。前に話しただろ? 期待の新人が入ったって。それがエイミーだ」
しゃ、社長。
もういい加減、”エイミー”で紹介すんのやめにしません?
あとハードル上げすぎ。
霊力は……もしかして少しはあるかもだけど、”期待の”とかそういうワードは、やーめーてー。
「で、この子はユリ。事務担当だ。交通費の精算や各種書類や手続き関係。ユリに聞けばなんでも答えてくれるぞ」
満面の笑みで紹介する社長にユリちゃんは、
「”なんでも”なんて言わないでください! まだわからないコトいっぱいあります!」
と大慌てだ。
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