第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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アセアセしながら両手をブンブン振るユリちゃん。 それを見た社長はニヤリと笑い、 「そんなコトねぇよ、ユリの仕事は完璧だ。これから繁忙期が始まって、俺が現場に出るようになっても安心してまかせられる」 なんてコトを言いながら、ユリちゃんの頭をワシワシ撫ぜた。 その顔はデレッデレ。 もうね、見てるコッチが照れちゃうよ。 まぁでも、ユリちゃんの仕事が丁寧で正確なのは本当だ。 「ああ、そうそう、」 ユリちゃんの頭から手を離した社長がランさんに向き直る。 「(らん)にはまだ言ってなかったけどよ、ユリは俺の嫁なんだ。……んん? なんだよその目は。言っとくが妄想じゃねぇぞ? ユリは俺にベタ惚れだ、俺はもっとベタ惚れだがな。もう一緒に住んでるし、今月下旬に入籍予定だ」 そっかぁ! 前に六月に入籍予定だって言ってた! わぁ! いよいよ本当の夫婦になるんだなぁ……めでたいっ! これはなにかお祝いをしなくちゃ。 あ、結婚式とかどうするんだろ? 後で聞いてみよっと。 「……s、」 ん? 今のはランさん? 聞き逃しそうなほどの小さな声は、僕の空耳かなって思うくらい。 でも、 「なんだ? どうした?」 社長がこう聞き返したってコトは空耳じゃなさそうだ。 みんなランさんが話すのを待っていた。 僕も社長もユリちゃんも。 だって何か言いかけて、その声が小さくて、誰も聞き取れなかったんだもん。 注目されるランさんは、ギョッとした顔で僕らを見ると、瞬時に顔を赤くして挙動不審になってしまった。 ソワソワしながら後ろを向いたり横を向いたり俯いたり。 途中コトバになってない「あうあう」的な、ナニかを呟き……最後には頭を抱えて座り込んでしまった。 ど、どうしたの? 急に体調悪くなっちゃったの? ランさんが心配で、背中をさすりに行こうとした僕を社長が止めた。 「待て、エイミー。ステイだ。 (らん)、悪かった。ちょっと今のはキツかったな。そのまましゃがんでろ。無理しなくていい。大丈夫だ、俺がいる。エイミー、ユリ、ちょっと(らん)から離れてくれ。んでもって(らん)の顔を見るな」 社長の指示に訳がわからないと思いつつ、僕とユリちゃんは座り込むランさんと距離を取る。 社長は「少し待ってろ」と僕らに言い、「大福、ちょっと来てくれ」とプリティ猫又を呼んだ。 「大福、コイツを冷やしてやってくれ」 座り込むランさんは、顔だけじゃなく耳まで真っ赤だった。 どうしたんだろう……? 急な発熱? だとすれば、僕の大福はすこぶるヒンヤリでうってつけですよ。 『うなぁん』 可愛く答えた大福は、ランさんを覗き込むと、熱のこもった頬に柔らか肉球をペタっとあてた。 「ジュゥゥゥゥゥゥ!」 えっ! そんなにランさん熱かったの!? と一瞬びっくりしたけど、よくよく聞けばアレ、社長が隣でアテレコしてたわ。 だよねぇ、さすがに、んなワケないわ。
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