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ジュウジュウジュウジュウ、社長のアテレコが炸裂する。
その間、僕の可愛い大福餅は、ランさんの頬やら耳やら、ヒンヤリ肉球をペタペタペタペタとあてまくる。
「……とうね、」
あ……ランさんが大福に何か言ってる。
しゃがみこんだまま泣きそうな顔で、さっきまでの脱力系無表情とはまるで違う。
もしかして……何か事情があるのだろうか?
どのくらいそうしてたんだろ?
ランさんは落ち着きを取り戻していた。
頬も耳も真っ赤だったのが、今は通常。
熱が引いたみたいだ。
「エイミー、ユリ、待たせたな。コッチ来ていいぞ」
ランさんの隣で社長が僕らに手招きしてる。
僕とユリちゃんは顔を見合わせ、戸惑いを隠しつつ二人の傍に行った。
「悪いな。驚いただろ? ちゃんと理由を話すし、嵐の紹介もするからよ。嵐、それでいいな?」
社長がランさんにそう聞くと、コクンと大きく頷いた。
と同時、またも頬が赤くなり始めてる。
大丈夫かなぁ、やっぱり体調悪いんじゃないの?
無理しないで早退するか、更衣室で横になった方が良いと思うの。
心配でランさんの顔を見ると、頬が赤く目が潤んでて、すこぶる不安そうな表情だった。
「エイミー、ユリ、改めて紹介する。コイツの名前は深渡瀬嵐。”嵐”と一文字書いて”らん”だ。霊媒師歴一年の22才。ウチの会社で一番の若手だな。前職はゲーム会社のプログラマー。霊的スキルについては後で詳しく話すとして……さっき、嵐が急におかしくなってびっくりしただろ? 先にそれを説明するわ」
嵐さん、やっぱり何か事情があったんだ。
でもいいのかな……それを僕らが聞いちゃって。
……あ、だからさっき社長は「嵐、それでいいな?」と聞いていたんだ。
嵐さんが納得してるなら聞いておきたい。
だってこれから僕らは長い付き合いになるんだもの。
もしかしたら、いつか嵐さんとツーマンセルを組む事だってあるかもしれない。
社長の説明はこうだった。
嵐はよ、極度の赤面症なんだ。
誰かと面と向かって話すのが苦手で、特に初対面や慣れない相手はダメだ。
緊張からすぐに顔が赤くなる。
赤くなるくれぇどうってコトねぇだろって、俺は思うけどよ、本人はそれをすごく気にしてる。
慣れない相手と話さなくちゃいけないとか、さっきみたいにみんなから注目されたりとか、そういった場面になると耳まで赤くなっちまう。
しかも、その赤面した顔を見られるのが苦痛すぎて、さっきみてえなパニックを起こすんだ。
ああなっちまったら、とにかく一旦距離を置いて顔を冷やして、熱を取るしかねぇ。
顔の赤みが収まれば、気持ちも一緒に落ち着いてくる。
エイミー、朝、嵐に会った時、不愛想なヤツだって思わなかったか?
無表情だし、喋らねぇし、一人でスマホ弄ってるし。
だが、アレが嵐の精一杯だ。
見た事のねぇ顔に元気に挨拶して、挨拶を返されて、そこから話が続いちまったら、緊張からパニックを起こす。
もしそうなったら相手に迷惑をかけるだろ?
だったら不愛想なヤツと思われていいから、最低限の挨拶と話しかしねえ。
長年、赤面症が元でトラブり続けた嵐の結論だ。
前の会社もな、それが原因でクビになった。
社内でコミュニケーションとれないヤツはいらないってよ。
ま、俺としてはクビになってくれて良かったよ。
そのおかげでウチの会社に来てくれたんだからな。
つーコトでよ、エイミーもユリも、嵐に戸惑うコトがあるかもしれねぇが、んなモン、お互いさまだ。
細けぇコトは気にしねぇで仲良くやってこうや。
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