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「ヘイヘイ! ボス、一時間も遅出させてもらってソーリーだ! どうしても仕上げたいモノがあってな! リリィ! カムヒア! 約束のブツを持ってきた」
長い脚で大股で、「リリィ!」と名を呼び近付くのはユリちゃんの元。
てか「カムヒア!」と言っといて自分から行くんだから、キーマンさんらしい。
ユリちゃんと百合の花をかけて呼ぶのは相変わらずだ。
「レイディをずいぶん待たせてしまった……が、その代わりコンフィデンスだ」
言いながら、大きなトートバックから取り出したのは、ピンクと赤のチェックの巾着袋。
口の部分には黄色いリボンがまかれている。
「これは……?」
不思議半分、ワクワク半分のユリちゃんが、目をキラキラさせて受け取ると、
「リリィ、オープンだ」
キーマンさんは中を見るよう促した。
うん、と頷き、黄色のリボンを解いて中を覗いたユリちゃんは……「あーっ!」と弾む声を上げた。
「キーマンさん! これ! これ!」
頬を赤く染め、近くのデスクにぽふんと座る。
そして机上に中のモノを並べだした。
あ……あれって!
机上に並ぶは、ミリタリープリンセス、全五種類コンプリート。
キーマンさんが経営するネットショップ、”キー&ストロング”の人気商品だ。
扱う商品はカワイイ雑貨と、ミリタリープリンセスシリーズ。
ミリタリープリンセスは一体一体手作りの完全受注商品。
萌え系美少女が迷彩柄のドレスでマシンガンをぶっ放す、という設定のお人形なのだが、完成度の高さが評判で、予約をしてから手元に届くまで、半年以上かかるという。
これを手掛けるドール作家、その正体はキーマンさんで、前からミリタリープリンセスのファンだったユリちゃんに、いつかプレゼントをすると約束をしてたのだが……
「すごいです! どの子も可愛いぃ! ああ、どうしよう! すごく嬉しい!」
普段おっとりでホワンとしたユリちゃんが、子供のように興奮してる。
キーマンさんが製作者と知る前から、お金を貯めていつか買いたいって言ってたくらいだもんね。
ユリちゃんは、全五種類のプリンセスを丁寧に机上に並べているのだが、途中、袋の中を見ながら固まってしまった。
「ユリちゃん、どうしたの?」
声を掛けると、ハッと石化が解除され、僕を見る目がジワジワと赤くなってきた。
ちょ、本当にどうしたのよ!
「キーマンさん、これ……」
胸の前で腕を組み、ニヤリと笑うキーマンさんは「ああ、」とだけ答える。
ユリちゃんは、そっと袋の中に手を入れると、もう一体のお人形を取り出した。
なんでもう一体あるの?
全部で五種類だったよね、新作か……?
と思っていたら。
ユリちゃんは取り出したお人形を両手で持って、社長に向かってこう言った。
「マコちゃん、見て」
……!
”マコちゃん”って、社長のコトか!?
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