第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「ちょっと待ったー!」   「ホワッツ?」と僕を見るキーマンさんはともかく、ビクゥッとしてる(らん)さんに「ゴ、ゴメン」と謝りつつも、どーしてもな疑問をぶつけた。 「さっきからキーマンさん、(らん)さんのコトを”ジェーン”、”キャサリン”、”ドミニク”って呼び方がコロコロ変わるのってなんなんですか? てか全部、外国の女性の名前でしょう?」 僕の質問に二人は一瞬ポカンとして、だけどすぐに笑い出した。 答えてくれたのはキーマンさんで、 「ジェーンの呼び方のコトか。umm……気になるか? それはなチェリーボーイ。キャサリンの名前が(ハリケーン)だからだ。外国のニュースで聞いた事があるだろう? (ハリケーン)が来るたび、とびきりセクシーなレイディネームをつけるのを」 だからチェリーボーイはヤメ(ry 「とびきりセクシーかは知らないけど、ハリケーンに女性の名前を付けるのは聞いた事があります……って、それかーっ! だから”ジェーン”、”キャサリン”、”ドミニク”なんだー! てか、なんで三種? 一人の女性名でいいじゃないですか」 僕がそう突っ込むと、キーマンさんはチッチッと人差し指を左右に振った。 「ノン、チェリーボーイ。ハリケーンは来るたびネームが変わる。イコール、ドミニクを呼ぶ時だって、チェンジしなけりゃおかしいって話さっ! だから俺は、”ジェーン”、”キャサリン”、”ドミニク”、これをターンしながらコールするんだよ。アンダスターン(わかったか)?」 「ア、アンダスタン」 もうね、こう答えるしかないでしょ。 キーマンルールでは、ハリケーンに見立てた(らん)さんを、三つの名前でローテーションさせて呼んでいる(てか惜しい! ハリケーン絡んでた!)。 ややこしっ! って思うけど、(らん)さんは不便を感じてないみたいだし、仲良し二人がそれでいいなら、ま……いっか。 「……クスクス、」 小さな笑い声。 横を向いた(らん)さんが、僕とキーマンさんの会話を聞いて、小さく肩を震わせていた。 ……なんだろ、(らん)さんが笑うと嬉しいや。 「キーマン! (らん)! エイミー! 今回の現場、説明すっからコッチ来い!」 社長の大声が男三人を呼びつけた。 現場の説明、この中に僕も含まれているというコトは……先輩霊媒師達に同行させてもらえるというコトだろう。 マジョリカさんの口寄せ以来、久しぶりの現場だ。 しかも今回、スリーマンセル。 キーマンさんと(らん)さん、初めて組むメンバーだ。 足を引っ張らないようにしなくっちゃな……僕は密かに気合を入れた。
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