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◆
高速道路をひた走る。
セーフティードライブのキーマンさんは、疲れた様子もなくトークを炸裂しまくっていた。
二人のお喋りが一区切りしたら話しかけようと思っていたのに、入る隙が見当たらない。
とにかく喋りまくるのだ。
最初は服や小物の話がメインだったけど、途中、キーマンさんが”グリーンのコントロールベースで顔の赤みを大幅カット!”の提案をしてからというもの、話題はそれ一点に絞られていた。
「ジェーン、後ろのシートに俺のトートバックがある。その中を見るんだ。ホワイトベースにブルーのドットの巾着袋。中にコントロールベースが入ってる。ミラーは持ってるな? さっそくトライだ!」
「う、うん!」
嵐さんは戸惑いつつも、運転席から振り返る……と、バチン! 僕と目が合った。
「……あ、どもども。えっと、キーマンさんのトートバックってこれですよね」
後部座席のはじっこに置いてあったトートバック。
布全体に青空が広がって、その真ん中には虹色のカギのイラストが大きく描かれていた。
これってもしや、キーマンさんの苗字が”鍵さん”だから選んだのだろうか?
僕がトートバックを手渡すと、途端、顔を真っ赤にさせる嵐さんは、「あ、ありがと」とすぐに前を向いてしまった。
ああ……緊張させちゃったかも。
キーマンさんとお喋りしてる時はダイジョブなのに……ちょっぴりショボーン。
でもさ、僕がいても、顔を見なければ赤くならないんだよね。
てことは……
「嵐さん、そのまま真っ直ぐ前を向いててください。それで、もし良かったら、僕とちょっとだけお話できたらなぁって。あ、でも、キツかったら無理しないで。その……顔を見なければイケるんじゃないかって思ったの」
僕がそう言うと、「Wow! チェリーボーイ、ナイスアイデアだっ!」とキーマンさんが言う。
嵐さんはなんて言うだろう?
「わ、わかりました。ボク、頑張ってみます」
ヨシ!
だけど注意しなくっちゃ。
辛そうなら僕の方から切り上げないといけない。
気を遣って頑張りすぎて、それでパニックを起こしてしまったら意味がないからね。
「嵐さん、さっそくグリーンのコントロール……なんだっけ? つけてみたら?」
さり気ない会話から始めるのだ。
でもって話をしながら別の作業をしてもらった方が、ソッチに気がいくだろう。
「う、うん。そうだね。
キーちゃん、それじゃあ使わせてもらうよ。……わぁ、この巾着袋カワイイ! これ布製だ! この大きさならキャンディーとか入れられそう。この中に……あった! これがコントロールベースかぁ」
嵐さんが控えめながら弾んだ声を上げた。
てか、包装袋は紙製じゃないんだな。
そう言えば、さっきユリちゃんに渡してた巾着袋も布製だった。
キーマンさん、ゴミの削減を意識してるのかな?
布製なら捨てずに使えるもの。
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