第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ 高速道路をひた走る。 セーフティードライブのキーマンさんは、疲れた様子もなくトークを炸裂しまくっていた。 二人のお喋りが一区切りしたら話しかけようと思っていたのに、入る隙が見当たらない。 とにかく喋りまくるのだ。 最初は服や小物の話がメインだったけど、途中、キーマンさんが”グリーンのコントロールベースで顔の赤みを大幅カット!”の提案をしてからというもの、話題はそれ一点に絞られていた。 「ジェーン、後ろのシートに俺のトートバックがある。その中を見るんだ。ホワイトベースにブルーのドットの巾着袋。中にコントロールベースが入ってる。ミラーは持ってるな? さっそくトライだ!」 「う、うん!」 (らん)さんは戸惑いつつも、運転席から振り返る……と、バチン! 僕と目が合った。 「……あ、どもども。えっと、キーマンさんのトートバックってこれですよね」 後部座席のはじっこに置いてあったトートバック。 布全体に青空が広がって、その真ん中には虹色のカギのイラストが大きく描かれていた。 これってもしや、キーマンさんの苗字が”鍵さん”だから選んだのだろうか? 僕がトートバックを手渡すと、途端、顔を真っ赤にさせる(らん)さんは、「あ、ありがと」とすぐに前を向いてしまった。 ああ……緊張させちゃったかも。 キーマンさんとお喋りしてる時はダイジョブなのに……ちょっぴりショボーン。 でもさ、僕がいても、顔を見なければ赤くならないんだよね。 てことは…… 「(らん)さん、そのまま真っ直ぐ前を向いててください。それで、もし良かったら、僕とちょっとだけお話できたらなぁって。あ、でも、キツかったら無理しないで。その……顔を見なければイケるんじゃないかって思ったの」 僕がそう言うと、「Wow! チェリーボーイ、ナイスアイデアだっ!」とキーマンさんが言う。 (らん)さんはなんて言うだろう? 「わ、わかりました。ボク、頑張ってみます」 ヨシ! だけど注意しなくっちゃ。 辛そうなら僕の方から切り上げないといけない。 気を遣って頑張りすぎて、それでパニックを起こしてしまったら意味がないからね。 「(らん)さん、さっそくグリーンのコントロール……なんだっけ? つけてみたら?」 さり気ない会話から始めるのだ。 でもって話をしながら別の作業をしてもらった方が、ソッチに気がいくだろう。 「う、うん。そうだね。 キーちゃん、それじゃあ使わせてもらうよ。……わぁ、この巾着袋カワイイ! これ布製だ! この大きさならキャンディーとか入れられそう。この中に……あった! これがコントロールベースかぁ」 (らん)さんが控えめながら弾んだ声を上げた。 てか、包装袋は紙製じゃないんだな。 そう言えば、さっきユリちゃんに渡してた巾着袋も布製だった。 キーマンさん、ゴミの削減を意識してるのかな? 布製なら捨てずに使えるもの。
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