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「キーちゃん……ありがと、ボク、今すごく頬が熱いのに……赤いの隠れてる、それだけで気持ちがすごく楽だ……こんなの初めて……岡村さんもありがとうございます……車に乗ってからずっとキーちゃんとばっかり話して、岡村さん、一人にしちゃって気になってたんだけど、話しかけられなくて……なのにぜんぜん怒らないでいてくれて……ああ、そうだ、みんなにも言いたいな。社長と先代、ジャッキーさんと弥生さんにも、」
むぅ、水渦さんが入ってないよ。
ま……それは、うん、仕方ないか。
ふふふ、それにしても嵐さん、めちゃくちゃ嬉しそう。
キーマンさんはきっと、嵐さんのこんな顔が見たかったんだろうな。
「ジェーン、先に姐御に知らせてやったらどうだ」
姐御って弥生さんのコトか?
てか、弥生さんは日本語呼びなのね。
きっと変なニックネームをつけたらシバかれるからだろう。
あの人ならやりそうだ。
「そうしようかな。弥生さんはいつも僕を庇ってくれる。会社で小野坂さんに怒られてると、すぐに来てくれるんだ」
あ……そうなんだ、弥生さん、嵐さんのコト守ってたんだな。
____強い方が弱い方を守るのは当たり前だろ?
前にこんなん言ってたっけ。
優しくて強くて弱い女性……ああ、もうダイスキ!
「ど、どうしよう……嬉しいから弥生さんだけじゃなくて、社長とジャッキーさんにも、今ラインしちゃおうかな。先代は……スマホ持ってないから今度にするけど」
嬉しそうな顔をして、いそいそとスマホをタップする嵐さん。
僕は思い立ってこう声を掛けた。
「してあげて、きっとみんな喜ぶよ。あとさ、ジャッキーさんへはしなくていいんじゃない? 弥生さんに『ジャッキーさんにも伝えといて』って書いとけばいいと思うの」
「ホワーッツ?」
「なんで?」
フロントから二人の声が重なった。
なんでって、そりゃあねぇ。
「あれ? もしかして二人共まだ知らないとか? 弥生さんとジャッキーさん、結婚したじゃないですか。だから、」
「ホワーーーーーーーーーーーーーッツ!? リアリィ!?」
「うっそーーーーーーーーーーーーーー!!」
キーマンさんはともかく、嵐さん、こんなに大きな声が出せるんだってくらいのボリュームで、僕はなんだかおかしくなってしまった。
「本当ですよ。だって事務所で二人のデスク見ませんでした? 隣同士の席なのに、家でも一緒なのに、お互いの写真を飾り合ってますよ? あの二人チョーラブラブです」
「ノットノウ……しばらく出社してなかったからな……ついアザーデイ、ボスとリリィの結婚を知ったばかりだというのに……まさか姐御とミスターが……」
キーマンさん、ジャッキーさんのコト”ミスター”って呼んでるのか。
そこはストレートにジャッキーさんでいいんじゃないか?
本人もジャッキー呼びを希望してるし。
「ボクも知らなかった……社長の結婚だって驚いたのに、まさか弥生さんとジャッキーさんが……でも嬉しい……」
乙女のように両手を頬にあてる嵐さんは、ぽーっとした顔で宙を見ている。
「なので、弥生さんに送っておけばジャッキーさんにも伝わります」
僕がそう言うと嵐さんは、コクコクと頷いてスマホを高速でタップし始めたんだけど……もうね、文字入力する指が溶けてる。
あまりの速さに残像が残っちゃってる、いやはや若い子ってすごいな。
それから僕達三人は、高速道路を降りるまでひっきりなしにお喋りをした(主に弥生さんとジャッキーさんの話)。
なもんで、聞こうと思ってた、キーマンさんと嵐さんが依頼内容をどこまで知っていたのか、それと、嵐さんの霊的スキルはどんなものなのか、聞けずじまいだったのだ。
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