第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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「キーちゃん……ありがと、ボク、今すごく頬が熱いのに……赤いの隠れてる、それだけで気持ちがすごく楽だ……こんなの初めて……岡村さんもありがとうございます……車に乗ってからずっとキーちゃんとばっかり話して、岡村さん、一人にしちゃって気になってたんだけど、話しかけられなくて……なのにぜんぜん怒らないでいてくれて……ああ、そうだ、みんなにも言いたいな。社長と先代、ジャッキーさんと弥生さんにも、」 むぅ、水渦(みうず)さんが入ってないよ。 ま……それは、うん、仕方ないか。 ふふふ、それにしても(らん)さん、めちゃくちゃ嬉しそう。 キーマンさんはきっと、(らん)さんのこんな顔が見たかったんだろうな。 「ジェーン、先に姐御に知らせてやったらどうだ」 姐御って弥生さんのコトか? てか、弥生さんは日本語呼びなのね。 きっと変なニックネームをつけたらシバかれるからだろう。 あの人ならやりそうだ。 「そうしようかな。弥生さんはいつも僕を庇ってくれる。会社で小野坂さんに怒られてると、すぐに来てくれるんだ」 あ……そうなんだ、弥生さん、(らん)さんのコト守ってたんだな。 ____強い方が弱い方を守るのは当たり前だろ? 前にこんなん言ってたっけ。 優しくて強くて弱い女性……ああ、もうダイスキ! 「ど、どうしよう……嬉しいから弥生さんだけじゃなくて、社長とジャッキーさんにも、今ラインしちゃおうかな。先代は……スマホ持ってないから今度にするけど」 嬉しそうな顔をして、いそいそとスマホをタップする(らん)さん。 僕は思い立ってこう声を掛けた。 「してあげて、きっとみんな喜ぶよ。あとさ、ジャッキーさんへはしなくていいんじゃない? 弥生さんに『ジャッキーさんにも伝えといて』って書いとけばいいと思うの」 「ホワーッツ?」 「なんで?」 フロントから二人の声が重なった。 なんでって、そりゃあねぇ。 「あれ? もしかして二人共まだ知らないとか? 弥生さんとジャッキーさん、結婚したじゃないですか。だから、」 「ホワーーーーーーーーーーーーーッツ!? リアリィ!?」 「うっそーーーーーーーーーーーーーー!!」 キーマンさんはともかく、(らん)さん、こんなに大きな声が出せるんだってくらいのボリュームで、僕はなんだかおかしくなってしまった。 「本当ですよ。だって事務所で二人のデスク見ませんでした? 隣同士の席なのに、家でも一緒なのに、お互いの写真を飾り合ってますよ? あの二人チョーラブラブです」 「ノットノウ(知らなかった)……しばらく出社してなかったからな……ついアザーデイ(この間)、ボスとリリィの結婚を知ったばかりだというのに……まさか姐御とミスターが……」 キーマンさん、ジャッキーさんのコト”ミスター”って呼んでるのか。 そこはストレートにジャッキーさんでいいんじゃないか? 本人もジャッキー呼びを希望してるし。 「ボクも知らなかった……社長の結婚だって驚いたのに、まさか弥生さんとジャッキーさんが……でも嬉しい……」 乙女のように両手を頬にあてる(らん)さんは、ぽーっとした顔で宙を見ている。 「なので、弥生さんに送っておけばジャッキーさんにも伝わります」 僕がそう言うと(らん)さんは、コクコクと頷いてスマホを高速でタップし始めたんだけど……もうね、文字入力する指が溶けてる。 あまりの速さに残像が残っちゃってる、いやはや若い子ってすごいな。 それから僕達三人(・・)は、高速道路を降りるまでひっきりなしにお喋りをした(主に弥生さんとジャッキーさんの話)。 なもんで、聞こうと思ってた、キーマンさんと(らん)さんが依頼内容をどこまで知っていたのか、それと、(らん)さんの霊的スキルはどんなものなのか、聞けずじまいだったのだ。
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