第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ 「気持ちーーーー!」 『うなーーーーー!』 高速道路を降り、少し走ると真っ直ぐな一本道が現れた。 二車線だけど、片線の道幅が広く、車も少ないからスイスイ進む。 道の両側には見渡す限り畑が広がっていて、青々とした作物が後方へと流れていった。 助手席で寝息を立てる(らん)さんと入れ違うように、たっぷり眠って充電完了な大福姫が起き出して、今、僕と一緒に窓の外を眺めているのだ。 「キーマンさん! N県、すごく良い所ですね! 僕、初めて来ました」 景色を見ながら運転席に声を掛けると、 「このジョブは現場中心だ。ロングに勤めるほど色んな土地に行ける」 そう言って笑った。 「そっか! そうですよね! 僕、前の仕事はデスクワークだったし、たまにお客様のオウチにお邪魔する事はあったけど、せいぜい関東圏だし、それもたまにしかなかったから嬉しい!」 「アーハン。今から楽しみだな。by the way(ところで)チェリーボーイ。普段車の運転はするのか?」 「いや……それが免許は持ってるけどペーパーなんですよ」 「そうか。運転は出来た方がいい。ムーブ(移動)が楽だからな。現場によっては車でないとノットgoな場所もある。なんなら……イエァ! 俺が教えてやってもいい」 そうなのよね。 当然、車でないと行けない現場だってあるだろう。 これから繁忙期になるし、そうなると毎回誰かと組んでというのが難しくなるかもしれない。 一人でどこへでも行けるように、運転の練習しようかな。 てか、やるコトいっぱいだな。 先代に修行をしようねって言われてるし、大福といっぱい遊ばなくちゃいけないし(でないと僕がさみしいからね)。 「ありがとうございます。今度ぜひ教えてください。てか繁忙期ってどのくらい忙しいんですか? 僕、入ったばかりだから分からなくて」 「umm……そうだな。俺はlast year(去年)、アパートメントに帰れたのは月に数日だった。まるでドックヌードルのように次から次へと依頼は入るんだ。だから毎年、サマーはボスも現場入りさ!」 ドックヌードル……ってなんだ? キーマンさんはちょいちょい英単語を混ぜてくる。 学生時代、僕の英語の成績は中の中(ま、全教科そうだったけど)。 たまに分からない単語があるんだよ。 そういう時はコッソリスマホで検索してる……今も手元の端末で調べてるんだけど、ヒットするのはワンちゃん用の麺類ゴハンばっかりだ。 これが言いたかったの? いやぁ、違うだろ。 だって犬のゴハンじゃ話が全く繋がらない。 「キーマンさん、あの、ドックヌードルってなんですか?」 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の……って言うからね。 直接本人に聞いてみる、すると。 「なんだ、ノットノウ(知らない)か? ソバだ、一口分のソバをサイドのアシスタントレイディもしくはジェントルメンがどんどん入れてくれて、お椀の蓋をするまでエンドレスに終わらない、」 え? それさ、わんこそばのコト?  なんでそれがドック……って、ま、まさか、ドック=わんこ、ヌードル=ソバ、とか言わないよねぇ? いくらなんでもくだらないぞ。 英単語ですらない、もはやダジャレに近い。 おそるおそる聞いてみると「チェリーボーイ! ビンゴだ!」と声をあげて笑う。
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