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「ハッハー! スペシャルなナビゲーションだろ? 目的地に着いた時、ラストはエブリデイこのテンションだ! もちろんメーカーの純正じゃあない、この改造はドミニクが手掛けたんだ! ナビのアナウンスを萌え系キャンデーボイスの幼馴染なツンデレガールに出来ないかって、ボスとミスターのストロングな希望でな!」
「マジかー。あの中年二人はナニ考えてるんだよ。自分の車ですればいいのに社用車って。これ、女性陣からクレーム出ないんですか?」
まったく呆れちゃうよ。
ま、ジャッキーさんはオタだし? 一般社員だし? 百歩譲って目を瞑るとしても、マコちゃんは社長じゃんか。
先頭切って依頼してどーすんのさ。
「その辺はノープロブレム。ジェーンはちゃんとチェンジオーバースイッチをつけたからな。レイディ達が乗る時は、ノーマルバージョンにスイッチオーンだ!」
なるほどね、それならクレームにもならないか。
てか、嵐さん……きっとあの二人に無理に頼まれたんだ。
でなきゃ純粋そうな彼が、こんなヘンなモノを作るはずがないよ。
「おっと、チェリーボーイ。そろそろシートでスヤスヤのキャサリンを起こしてくれないか? このままだとミセス斎藤に、エンジェルボーイの寝顔を見せるコトになる」
「わかりました。……でもよく寝てるから起こすのかわいそうだなぁ」
キーマンさんはハザードランプを焚くと、すぅっと車を左に寄せた。
僕は後部座席から嵐さんを揺り起こす。
「ん……あと五分、」
寝ぼける嵐さんを、ココロを鬼にして「ダメです。お母さんは許しませんよ」とさらにユサユサ(なにこの生き物、可愛いんだけど)。
そんな僕らを横目に、キーマンさんはスチャっと社用スマホを取り出すと、どこかに……いや、きっと斎藤様に訪問前の電話連絡を入れるようだ。
グズる嵐さんを起こすべく、大福までもが参戦し、僕はユサユサ、猫又は耳元で『うなーうなー』と鳴きだした。
てか手ごわい、寝起き悪い、ぜんぜん起きない。
そんな中、斎藤様に電話が繋がったようで……
「ハロー、ミセス斎藤? おくりびカンパニーから、たった今、霊媒師三人がアライブした。これからレイディの元へ向かってもいいかな? ホワッツ? マイネーム? オウイェ、知りたいか? ……俺の名前は智哉、鍵智哉だ。あらゆる事件のカギを握る男、キーマンと覚えてくれ、アーンド、プリーズコールミー! イエァッ!」
通常運転すぎるキーマンさんのご挨拶、これが車内に響き渡った……のと同時。
サーーーーッ
僕の中で血の気が引く音が聞こえたのだ。
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