第十八章 霊媒師 深渡瀬 嵐(ふかわたせ らん)

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◆ 通されたのは広くて陽当たりの良い、リビング……というよりは応接室といった感じの部屋だった。 フカフカの焦げ茶色の絨毯が敷き詰められた真ん中に、白い革張りの大きなソファ、そのソファとセットなのか同じく白いローテーブル。 斎藤様は、僕達三人にソファに座るよう勧め、「すぐに戻ります」と部屋を出ていった。 大きなソファの奥から、(らん)さん、キーマンさん、僕の順で並んでいる。 僕は隣のスリーマンセルのリーダーの横腹を突っついた。 「あの、キーマンさん。さっきの! 斎藤様に”生まれも育ちもニューヨーク”、なんて言っちゃって良かったんですか?」 斎藤様がいないのをいい事に、嘘じゃないけど……ねぇ、なアノ事を突っ込んでみた。 「アーハン? 何か問題でも? ボーン&レイズド(生まれも育ちも)、”入浴シティ”と言っただけだ」 シレっと答えて片目を瞑るキーマンさんだが……これは確信犯ですわ。 「キーちゃんは、誰にどう思われても自分を変えないんだよ」 僕の方を見てるけど、目線はタオル腹巻あたりに飛ばす(らん)さんがそう言って小さく笑う。 うん、そだね。 まったく変わっていなかった。 いつも通りのキーマン節だ。 てか、今回の斎藤様は、うまいコト日本語と英語が混ざってしまう外国人の方なのね、って誤解してくれたからいいけれど、今まで現場でクレームになった事とかないんだろうか? それをやんわりと聞いてみると、 「クレーム? ノンだ、チェリーボーイ。確かにファーストコンタクトは俺のトークに驚くカスタマーばっかりさ。だがな、そんなのはトリビア(些細なコト)なんだよ。考えてみろ、カスタマーは俺にナニを求めてる? パーフェクトなビジネスマナーじゃない、パーフェクトなミッションクリアだ。俺はこのThree years(三年間)、それに応えてきたからな」 そう言って不敵な笑みを浮かべるキーマンさんは、失せ物探しに関して絶対の自信を覗かせていた。 なんたって先代のお墨付きなのだ。 今までの現場で、独自なキーマントークを通しても、最終的には実力で黙らせたという事なのだろう。 さ……さすがだ……でも……でもさ。 「キーマンさんがどうして自分を変えないのか……いや、変える必要がないのかわかりました。探せない失せ物は無い、という事なんですね。……じゃあさ、なんで斎藤様には日本語がイマイチな外国人で通してるの? そりゃあ誤解したのは斎藤様だけど、ニューヨークシティじゃなくて入浴市だしぃ」 さっきの明らかに誘導したよね? あんな言い方、ニューヨークだって思うよね? 斎藤様のエラーを誘ったよね? 「oh no……キャサリン、チェリーボーイにレイディの扱い方を教えてやれ。ヘイ! ちっともわかっちゃいないんだな! At that time(あの時)、ミセス斎藤は「真相分かっちゃったんですけど」ライクだったじゃないか! ガールのように頬にローズを咲かせてた、それを否定しろと? 「残念だったな、予想は外れだよ」そう言えと? スーパーフェミニストの俺には無理だ。それに……今回、誤解したままの方が話がスムーズにいきそうだったからな(ニヤリ)」 さっきのはスーパーフェミニストゆえだったの? いや、でも最後に”誤解したままの方が都合が良い”的なコト言っちゃってたよね? ホントはそこがメインディッシュなんじゃないの? それを裏付けるように(らん)さんが補足説明をしてくれて…… 「キーちゃんはね、実力で切り抜けるのと、外国人だと思わせて煙に巻くのと半々くらいなんだ」 ああん、やっぱりそうかとキーマンさんをチラリと見ると「そんなコトはトリビアさ」と歯を光らせたのだ。
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