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「じゃあ俺達はゴーホームだ! みどり、また会えるといいな! その時はジョブじゃなく、フレンドとしてだっ! それまでグッバーイ!」
キーマンさんの運転する社用車が滑るように走り出し、バックミラーに映る斎藤様が小さくなっていく。
チビクマ改めルミちゃんは、ずっとはしゃいだままだ。
まぁ、無理もない。
『るりー! るりー! るりに逢えるー!』
って、あはは、子供か。
嵐さんはスマホを取り出し、ルミちゃんを視ながらなにやら熱心に画面をなぞっているのだが……ダイジョウブ? 酔わない?
ナニしてんだろ?
誰かにメールでもしてるのかな? もしかして彼女さんとか? きゃー!
だとしたら話しかけるなんてヤボだけど、気になっちゃって結局声をかけた。
「嵐さん、なにしてるの? もしかしてぇ、彼女さんにラブメッセ?」
『うっなーん?』
僕と大福は興味津々、だけど予想は外れてた。
耳を真っ赤にした嵐さんが顔を上げ、
「チ、チガウよ! ボク……彼女なんていないもん! あのね、ルミちゃんの絵を描いてたの。キーちゃんにルミちゃんは視えないでしょ。キレイにしてあげるのに、元の姿がわからないと出来ないなぁって。だからコレ、お絵かきアプリで描いてたんだ。まだ仕上がってないけど……こんな感じ。似てるかなぁ?」
と画面を僕に向けたのだが……ナニコレ!
「ちょ! そっくり! フワフワの質感とか完全再現! てかうまくない? イラストっていうより写真みたいだよ! そういえばジャッキーさんも絵かうまかったんだよな。写真みたいに描いてた」
本当にびっくりした。
時間もそんなに経ってない、サササと描いてこのクオリティ?
ジャッキーさんといい嵐さんといい、すごいな。
「良かった。じゃあこれを仕上げてキーちゃんに送れば、修復の資料になるね。……あ、あとね、ジャッキーさんに絵の描き方というか……コツを教えたのはボクなんだ。ボク……ゲーム会社出身だから、キャラとか背景とかアクセサリとか……イラスト描く機会が多かったの。ジャッキーさんは描きたい人がいたみたいですごく頑張ってた」
「マジか……じゃあ、あのマジョリカさんの写真みたいなイラスト、嵐さんに習って描いたんだ……てか、あのオジサン、愛の為なら努力を惜しまんな」
感心して独り言ちる僕に嵐さんは、
「そ、それで……もしよかったら、こ、今度一緒にゲームしない?」
とモジモジしてるのだが……え、今、嵐さん。
僕を誘ってくれた?
それって……僕達の距離が縮まったと考えていいのかな?
「ぜひっ! いつにする? 場所は? 僕んち来る? 一人暮らしだから気がねないよ! あー! でもな、気兼ねもないけどゲーム機もないや! 嵐さん、持ってきてくれる? あとゴハンどうしよう! てか作る、作って待ってる! なんだったら泊ってく? それか一緒に住む?」
あらやだ、嬉しくてガッつきすぎたよ!
嵐さん引くかな、引くよな、どーしよ!
やっぱりやめたとか言われたら!
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