第二十章 霊媒師 瀬山 彰司

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1個はメロン大の重たい梵字、これを軽く。 僕のスキルじゃまったく違うモノに再構築は難しい。 梵字と似たようなモノ、僕でもなんとかなるような、そんなイメージで、そんなイメージは____ ____えいみ、エイミ、すき、 長い黒髪、白い肌、黒のワンピに黒い靴。 弥生さんにそっくりの、ちっちゃくてあどけない、幼い姿が愛らしく、声のかわりに天から文字を降らせる女の子。 その文字は紫色で、羽のようにふわりふわりと落ちてくる……ヤヨちゃん、 「イメージ来たーーーー!!」 脳内で、ヤヨちゃんが可愛く微笑んでくれた。 その瞬間、霊鎖に霊力(ちから)を一気に流した。 流した霊力(ちから)は梵字の中で、(おさ)霊力(ちから)を食い潰して乗っ取って、炎がみるみる鎮火する。 プスプスと黒い煙が立ち上って飛散して、数多の梵字が剥き出しになった。 よし! いいぞ! 「梵字は文字! 文字を文字に再構築!」 イメージを口に出して意味を強めた。 脳内のヤヨちゃんは可愛くって、ちっちゃなおててを天にかざして【シチューたべたい】と降らせてる。 「好きなコト、好きなモノ、好きなヒト、したいコト、願うコト、ぜーんぶ文字に! 文字の雨を降らせてちょうだいーーーーー!」 思いっ切り叫んだ。 霊力(ちから)霊力(ちから)を加え、イメージを流し込み、祈る気持ちで梵字を視つめていた。 頼む……頼む……頼む……たの……あ……変化が始まった。 一つ一つは黒い塊、その表面に刻まれた梵字が薄くなっていく。 同時、塊の黒色が、僕の霊力(ちから)の赤へと変わる。 変わりながら光を発し、その光も徐々に強まり、眩しくて視てられない程の輝度となった後、失った浮力を取り戻した。 1個、2個、3個、浮き上がる塊は数を増やし、赤くて光ってどんどん天へと昇ってく。 それは短い時間だった。 あっという間に山は崩れ、僕と大福がいる位置よりももっと高く、赤い雲が広がった、そして。 シャンッ! たくさんの鈴が鳴ったような、そんなキレイな音がした直後。 赤い雲が細かく千切れて、ふわりふわりと降りだした。 色は違うけど、羽みたいなその軽さはヤヨちゃんの話すコトバによく似ていた。 「……はは……ははは……やった……成功した……重たい梵字が羽の日本語に変わった……ははは……はは……やったーーーーっ!!」 『にゃにゃにゃにゃーーっ!!』 空中で羽の文字を浴びながら、僕と大福は大はしゃぎだった。 浮かれる猫はお得な三尾をブンブン振って、浮かれる僕はフワモコ毛皮をワシワシ撫ぜて、思う存分喜びを分かち合った。 下を視れば山の無き跡。 男達が重なるように倒れていた……が、霊体(からだ)を潰す塊がなくなって、ふらつきながらも全員、その足で立ち上がったのだ。
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